コロナ下のつながりテーマに 無人駅の芸術祭
【静岡】大井川鉄道の無人駅を舞台に、地元に根ざしたアート作品を展示する「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」が5日、始まった。2018年から毎春開いており、4回目。今年は「コロナ下の表現」をテーマに作品を公募し、16組が出展した。
島田市川根町抜里(ぬくり)の抜里駅では、さとうりささんの作品「地蔵まえ3」がお出迎え。お供えもちのような真っ白な強化プラスチック製の物体だ。昨年、近隣の民家に預けられ、「家族」として過ごした。その時の写真が駅舎内に貼ってある。
今年制作した「地蔵まえ4」は同じフォルムの巨大なバルーン。横浜市のさとうさんと地域の人をオンラインでつなぎ、地域の人が型紙に沿って布を切り取る「宿題」に取り組んだ。後日、さとうさんが現地入りし、縫い合わせた。
李豪哲(イホチョル)さんと吉浦嘉玲(かい)さんのユニット「歪んだ椅子」の作品「相関差模型」は同駅出発の参加型アート。まず、駅前の小屋でガチャガチャを回し、指令を受け取る。地元から参加した米沢泰吉さん(72)への指令は「かかしの相談に乗り、その内容を書いて、掲示板に貼る」。米沢さんは橋の上のかかしとしばらく話し込み、黄色いクレヨンで「そっち行ってどうだ? 52年前が昨日のようだ」と書いた。若かりし時代を思い出したようだ。
続く参加者は別の指令への答えを掲示板に貼る。複数の人の足跡が掲示板に積み重なり、作品ができていく。その過程がアートなのだという。
安部寿紗(かずさ)さんは、手のひら大の米粒のぬいぐるみを1千体作り、代官町駅近くの金谷公民館に並べた。タイトルは「お米のあかちゃん」。参加者は、一粒に名前をつけ、シールに書いてぬいぐるみに貼る。養子にもらうことを希望する人は宅配伝票を書けば、着払いで受け取ることができる。ただし、誰が名付けた「子」が来るかはわからない。28日に同駅で「子」らの名前を叫ぶパフォーマンスもある。
主催のNPO法人クロスメディアしまだの大石歩真(あるま)理事長(43)は「人と直接触れ合わずに、地域との交流を生み出すという難題に取り組んだ力作ばかり。温かな交流が作品を通じて見えてくればうれしい」。
28日まで。問い合わせは同芸術祭事務局(0547・35・0018)。
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