(魂の中小企業)サヨナラ「ご祝儀貧乏」貸ドレスで挑戦
松田愛里(あいりぃ)、29歳。
結婚披露宴やパーティーなどに参加する女性向けのドレスをレンタルする。そんな会社「アンドユー」を2019年につくった社長であり、ただ1人の社員である。
利用する2日前に指定場所にドレスが届き、使った翌日に返送する。3泊4日で税込み4950円から。20~30代の女性を中心に全国から2500人を超える利用があった。
20年は勝負の年!
そう松田は位置づけていた。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、結婚式やパーティーが開かれなくなった。利用者はほぼゼロに。
「廃業」の二文字が、頭をよぎる。
けれど、松田は思い直した。
わたしは自分に誓った。世の中から「ご祝儀貧乏」をなくすぞ、と。
◇
神奈川生まれ。おしゃべり大好き。イベント大好き。大学生のときは、新入生の世話役を買ってでるなど、世話好き。
そして、洋服だ~い好き。大学の4年間、アパレル店でバイト。でも、痛感した。
〈けっきょく、お客さんは服のデザインや値段で決める。どんなに店員がガンバったところで、限界がある〉
就職活動で、「ノバレーゼ」という会社を知った。社員2千人をこえるブライダル大手。本社は東京・銀座で、東証1部上場。
会社説明会に行った。社員みんなが楽しそうで、純粋にお客のためを思っていると感じた。14年、入社した。
◇
松田の配属先は、社長室だった。担当は子会社の経営管理。財務諸表を読めるようになった。2年目のとき、広報室ができた。先輩社員とふたりの部署。先輩は室長として広報担当、松田はIR担当。IRは、会社の経営状況を株主や投資家などに説明する役割だ。
見たことも聞いたこともない用語を勉強していく。ときに重箱の隅をつつかれるような質問をされる。それに、ササッと答える。
快感!
松田は、IR大好き、になった。
ところが……。
16年、ノバレーゼは非上場…