コロナワクチン、失神に注意 不安の連鎖防ぐ備えを

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聞き手・小宮山亮磨
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 新型コロナウイルスのワクチン接種が、国内でも医療従事者から始まっている。注射による痛みや重いアレルギー反応を懸念する声もあるが、より心配な副反応として、注射時のストレスで失神を起こしてしまう「血管迷走神経反射」をあげる専門家がいる。日本ウイルス学会の理事などを務め、予防接種に詳しい長崎大学の森内浩幸教授に聞いた。

 新型コロナのワクチンは、十分に許容できる安全性と、驚くほどの有効性を示しています。

 安心して多くの人に接種してもらえれば、何よりその人のためになるし、感染拡大を防げるので社会のためにもなります。

 アナフィラキシーと呼ばれる重いアレルギー反応の報告もありますが、これは数十万人に1人しか起こらず、これは抗生物質や痛み止めの薬よりも2桁くらい少ない頻度です。

 しかも接種会場には、それに対する特効薬が準備してあります。

 接種後に筋肉痛が起きたり体がだるくなったりする副反応は、ワクチンが効いて体が抗体をつくれるようになるための準備段階であり、しばらくすればよくなります。とくにひどいときには痛み止めの薬をのめば軽くなります。

 ただ、私がいちばん懸念しているのが、「血管迷走神経反射」と呼ばれる副反応です。

脳貧血でバタッと床に

 接種が広がる過程でこの副反応について誤解された情報が拡散し、そのことがさらに副反応を増やし、結果として接種率を下げてしまうおそれもあるからです。

 血管迷走神経反射とは、注射を受ける前後のストレスがきっかけとなり、立ちくらみのときのような脳貧血状態になり、バタッと床に倒れてしまったりするものです。

 しばらくすればよくなりますが、倒れたときに打ちどころが悪ければ大ごとにつながる場合もあります。

 注射した直後に起きることが多いのですが、まだ針が刺さってもいないのに起きることもあるし、接種し終わってしばらく経ってから起きることもあります。

 体中に広がっている副交感神経のうち、心臓や血管の動きをつかさどるのが血管迷走神経です。

 そのはたらきが強くなりすぎると脈が下がり、血管が広がって血圧が下がります。それによって脳に流れる血液が一気に少なくなる。これが血管迷走神経反射です。

 そのときに急に立ち上がれば、一時的に脳貧血になって失神してしまうわけです。不安や恐怖心から逃れようと体が一気にリラックスしてしまい、こうしたことが起こります。

 ホラー映画をみたときには、ドキドキして目が離せなくなる人もいますが、逆に失神してしまう人もいますよね。

 不安や恐怖に対しては、交感神経のはたらきで心臓がドクンドクンと速く強く動いて血圧が上がる人のほうが多いのですが、逆に副交感神経のはたらきが急にグンと強まる人もいるのです。若い女性に多いと言われています。

 血管迷走神経反射がどのくらいの頻度で起きるのか、予測するのは難しいです。

 日本では、子宮頸(けい)がんを防ぐためのHPVワクチンの接種で、アナフィラキシーより高い頻度で起きました。報道もされ、接種率の低下につながりました。

 ワクチンが血管迷走神経反射が起こりやすい若い女性が対象だったということもありますが、理由はそれだけではないと考えます。

 「痛いらしいよ」という話を…

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この記事を書いた人
小宮山亮磨
デジタル企画報道部兼科学みらい部
専門・関心分野
データ、統計、自然科学、社会科学