怪童も怪物も巣立った将棋道場に幕 コロナが追い打ちに

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佐藤圭司 東郷隆
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 故・村山聖(さとし)九段をはじめ5人のプロ棋士を送り出した名門道場「広島将棋センター」が3月7日、43年の歴史に幕を下ろす。常連客の高齢化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけた。

 広島将棋センターを巣立った人気棋士たちの先駆けは、映画「聖の青春」の主人公になった村山聖九段(1998年、29歳で死去)だ。

 広島県府中町出身で、子どものころにセンターに通い詰めて腕を磨いていた。そんな村山さんを、78年にセンターを開設した初代席主の故・本多冨治さんが関西在住の森信雄七段(69)に紹介。森七段の指導も得て、村山さんはプロ入りを果たした。若手時代から「東の羽生(善治九段)、西の村山」と称されるほど期待され、名人への挑戦権を10人の棋士で争うA級順位戦に参加するトップ棋士になった。

 その後、センターからは山崎隆之八段(40)、片上大輔七段(39)、糸谷(いとだに)哲郎八段(32)、竹内雄悟五段(33)が相次いで森七段に弟子入りした。「僕が今あるのは本多先生のおかげ」と語ったこともあるほど、広島将棋センターを大切に思う山崎八段は「(センターがなくなるのは)非常に寂しいですね」と惜しむ。糸谷八段も「子どものころから通わせていただいたセンターですから、非常に残念です」と語った。

 ネット将棋の普及やコロナ禍もあり、対面式の道場経営は厳しさを増している。日本将棋連盟直営の新宿将棋センター道場(東京)も3月末で閉まる。

 連盟の常務理事を務める井上慶太九段(57)は、ここ数年、関西でも将棋道場を閉める話を数件伝え聞いていたという。「地方の将棋道場は将棋を普及させるうえで大切な拠点。広島将棋センターはたくさんの名棋士を育み、関西将棋界に送り出してくださった特別な場所だった」と感謝し、惜しんだ。(佐藤圭司)

藤井二冠に憧れる子どももショック、代表「町道場の役割は終えた」

 2月の日曜。広島市中区の雑居ビルにある将棋センターで、小学生を対象にした全国大会の県予選会が開かれた。ピシッ、ピシッ。対局で向き合った約15組の子どもたちは、黙々と、そして素早く盤上の駒を動かしていく。

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