密漁者は北の海で死んだ 「黒いダイヤ」中国で高値
北海道北部、日本海に面した苫前(とままえ)町の力昼(りきびる)漁港は闇に包まれ、冷たいみぞれが降っていた。背後に崖が迫る小さな漁港は近くに民家もなく、漁期以外はほとんど人気がない。2020年4月9日午前1時過ぎ、船外機付きのゴムボートが着岸すると、男たちがかごを運び上げた。その直後、身を潜めていた留萌海上保安部の海上保安官たちが飛び出した。
「海の黒いダイヤ」と呼ばれ、高値で取引されるナマコ。その密漁の摘発の瞬間だった。留萌海保には事前に密漁の情報が匿名で寄せられていた。
密漁グループは20~40代の男12人。3人はその場で漁業法違反と水産資源保護法違反の疑いで現行犯逮捕されたが、9人が逃走。そのうち1人は海に飛び込み、港を囲む消波ブロックに泳ぎ着くとブロックの陰に身を隠した。海上保安官が見つけた時には、男は低体温症で意識がもうろうとしていた。病院に運ばれたが、死亡が確認された。
「こっちは4月でも凍えるくらいの冷たさだ。隠れているうちに凍えて意識をなくしてしまったのだろう」。この海域で漁業権を持ち、密漁の被害者でもある北るもい漁協の蝦名修専務理事(60)は話す。
残る8人のうち6人は翌日、港付近で身柄を確保された。さらにリーダーの男(37)は5月11日に、最後まで逃げた男(33)も同20日に逮捕された。リーダーは暴力団の交遊者。最後の男は道南に拠点を置く暴力団の元組員だった。
男たちの公判は6~8月、旭…
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