第5回変わらぬ差別、隠せなくなった社会 「地方女子」進学から見えるもの

有料記事女子の進学変わりましたか

聞き手・福井万穂
[PR]

 「女の子だから、地元に残ってほしい」「女の子なのに浪人するの?」――。女性の受験生が、周囲のそうした言葉で希望する進路を阻まれるケースが今なお残る。なぜなのか。地方出身で、日本の地方都市に生きる女性をリアルに描く小説家・山内マリコさんに聞いた。

 ――2016年に出版され、映画化された小説「あのこは貴族」では、東京生まれで箱入り娘の華子と、地方から慶応大に進学した苦学生の美紀という、対照的な女性の人生が交差します。美紀に対し、父親が「女が勉強しても仕方ないだろ」と口にしたり、学費を出し渋ったりする描写がありますね

 美紀は、私より少し年下を想定しました。私は富山県出身で、大学進学が1999年。クラスの女子のだいたい半数が県外に出ていました。もちろん親に反対された子もいたけれど、説得して許しを得られた人が大半。「女子だから県外に出られない」との認識はなかった。

 ところが12年のデビュー作「ここは退屈迎えに来て」の刊行直後に知り合った女子大学生が、「同級生の女子には、地元から出してもらえない子がたくさんいる」と言うので、驚きました。10年足らずの間に、女子の進学はむしろ、より制限を受けやすくなっている。その現状を小説に反映させました。

 ――70年代に1割だった女子の4年制大学への進学率は大きく上昇し、現在、男子との差は6ポイントほどに縮まっています。それでもなお、女子が制約を受けるケースが残る背景には、何があると考えますか

 経済的に余裕があってある程度は覆い隠されていた男女差別が、露骨に表れてきている、ということではないかと思います。

かつて「地方女子」だった山内さんが見る、社会とジェンダー意識の変化とは。記事の後半では、「進路を親に反対されたら、どうするべき?」との問いにも答えていただきました。

 私の両親はちょうど団塊世代

この記事は有料記事です。残り2351文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    富永京子
    (立命館大学准教授=社会運動論)
    2024年4月26日9時8分 投稿
    【視点】

    山内さんの真摯な態度には感銘を受けましたし、『あのこは貴族』も素晴らしい作品だと思いますが「まずは正面から言葉を尽くして、ぶつかってみるしかないかな」というのは対話の万能性を信じすぎているし、いまの若年層の「いい子」さ、年長者への従順さ(こ

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    武田緑
    (学校DE&Iコンサルタント)
    2024年4月26日10時14分 投稿
    【視点】

    山内さんの5つ下の都会生まれ育ちです。ジェンダーギャップはまだまだ大きいものの、時代が進むにつれて解消傾向であると思っていましたが、下の世代の女の子たちの方が、家計が苦しくなった影響から進学の制限を受けやすくなっている・・・という見解にハッ

    …続きを読む