日本は学歴階級社会?使いがちな「私ができたんだから」

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聞き手・田中聡子 聞き手 編集委員・塩倉裕
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 「大卒の親の子は大卒」「学歴は親の経済力次第」。生まれによる教育機会の格差を指摘する声が強まっている。日本は学歴によって分断される「学歴階級社会」になりつつあるのか。

「特権次第でスタートに差」長崎県立諫早高校3年の山邊鈴さん

 「そもそも、スタート地点が違う」。私が必死で手に入れたものを最初から持っている同世代と会うたび、そう感じてきました。日本は学歴社会以前に、生まれながらに将来の選択肢が決まっている「階級社会」だと思います。

 長崎県の緑豊かな町で生まれ育ちました。「階級」を実感し始めたのは、高校1年の時です。英語のスピーチコンテストで決勝に進出。意気揚々と東京の会場に赴いたものの、海外で育った子たちの英語の雑談にすらついていけず、強烈な居心地の悪さと恥ずかしさを感じました。惨敗して帰る飛行機の中で、母はつぶやきました。「これで分かったやろ。ここは、別世界の人の場所さ。上を見れば見るほど苦しくなるとよ」

 その言葉の呪いを解こうと、必死に周囲を説得して様々なサマーキャンプやコンテストに参加しましたが、周りの経済的な環境は自分とは違いました。どこに行っても「私は本来ここに居るべきではない」という感覚が付きまとい、行き場のないやるせなさが積もっていきました。

 どうしても逆数が分からない子、朝食を食べて来られない子。幼い頃からそんな友達に出会うたび、彼らの可能性を最大限に発揮できる世界を作りたいという思いを強めてきました。でも、人は「社会を作る側の人間」と「そうではない人間」の2種類に分けられていて、私は永遠に後者なのでは――という恐怖にとらわれてしまいました。スタート地点が違うマラソンで、はるか前を走る人の背中を追いかけ続けている感覚です。

 昨年、そんな自分の葛藤をネットメディアの「note」に投稿すると、多くの反響がありました。私が抱いていた違和感は、私だけのものではなかったようです。

 記事の後半では東京工業大学理事・副学長と、教育社会学者が、それぞれの視点から学歴階級社会について考察します。

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 階級を乗り越えた意識のある…

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