慰安婦判決、こじれる日韓 求められる想像力と冷静さ
韓国の裁判所が日本政府に元慰安婦への賠償を命じた。韓国最高裁が日本企業に元徴用工らへの賠償を命じたことに続き、日本政府は反発する。判決の背景や問題解決への道を考える。
慶応大名誉教授・小此木政夫さん「積極主義は朝鮮の伝統」
まさか、ここまでの判決が出るとは思っていませんでした。
日韓両政府は1965年、国交正常化に際して結んだ条約や協定をめぐり、合意できない点については、互いに異なる解釈を認め合うことで妥協しました。しかし、2018年の韓国最高裁判所(大法院)の「徴用工」をめぐる判決や、今回のソウル中央地裁の「慰安婦」に関する判決は、それを覆してしまいました。
つまり韓国の裁判所は、政府間の外交による合意よりも、自らが掲げる正義の実現を優先させたわけです。この場合の正義とは、「日本が1910年、大韓帝国を併合した条約はそもそも無効であり、日本による植民地支配は不法。よって、戦争中の動員政策は反人道的な不法行為だ」として日本側の責任を問うことです。
今の韓国の三権分立は、三権の間の「抑制と均衡」ではなく、司法権が優位に立ち、行政権の分野に積極的に介入しているように見えます。こうした司法積極主義は、日本の消極的な司法のあり方とは対照的であり、朝鮮の伝統に根ざしたものです。
朝鮮王朝では王権は絶対的なものではなく、儒教政治の理念に縛られました。司諫(しかん)院や司憲府と呼ばれた、国王や官吏の行動を監視する機関の権限が強く、国政が儒教の教義から逸脱していないかが常に問われたのです。
しかし、独立後の韓国では…
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