培養肉のチキンナゲット、初の販売開始 「安全で健康」

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シンガポール=西村宏治
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 ニワトリの羽の細胞から培養された人工的な鶏肉の販売が、世界で初めてシンガポールで始まった。土地が狭く、食料の生産に限界があるシンガポール。国内の農畜産業の規模が限定的なこともあり、政府は新たな食料の生産技術の導入にも前向きだ。

 植物由来の材料で作った「卵」など、代替たんぱく質の製品を手がける米国の食品企業「イートジャスト」が昨年12月19日夜、シンガポールにある会員制レストラン「1880」で、培養肉を初めて顧客に提供した。

 今回、製品化が認められたのは培養鶏肉を使ったナゲット。1880を営むマーク・ニコルソン氏は「私も試食したが、従来の鶏肉だと言われても分からない。1月以降、供給に合わせて定番メニューにしたい」。価格は1皿23シンガポールドル(約1800円)で、高級鶏肉の料理と同じ程度の値段という。

 イートジャストによると、培養鶏肉はニワトリの羽の細胞をもとに生産。バイオリアクターと呼ばれる反応槽で、安定して増殖できる状態になった細胞株にアミノ酸ブドウ糖ビタミンといった栄養素を供給して培養する。約2週間で1キロの鶏肉になるという。

 そのうえで植物由来のたんぱく質や、調味料などと合わせてナゲットとして仕上げている。製品開発を担うザカリー・ティンドール氏は「サルモネラ菌などの心配がなく、安全で健康的だ」と強調する。

 イートジャストの本拠は米国だが、シンガポールでは地元の専門学校や企業と連携して生産設備を準備。昨年11月に国の販売認可を取得した。培養鶏肉の販売認可については米国の食品当局などとも協議しているほか、群馬県の和牛農場などとも提携し、和牛の培養肉の開発も続けている。

 ジョシュ・テトリック最高経営責任者は「めざすのは動物をまったく殺すことなく、大半の肉や卵が生産される世界。まずは今後10年、規模の拡大とコストの低減などが課題になる」と話す。

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 鶏肉を含む培養肉をめぐって…

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