日本のコロナ医療は「崩壊の入り口」忍び寄る危険レベル

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聞き手・服部尚
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 新型コロナの感染が急激に広がり、患者を受け入れられない医療機関から「医療崩壊」の危機が叫ばれています。欧米に比べると感染者数は大幅に少なく、先進国のなかでもずば抜けて病床数が多いのに、なぜそんな危機的な状況になるのでしょう。地域医療政策に携わってきた奈良県立医大の今村知明教授(公衆衛生学)は「まだまだ入り口」だと言います。

まだ抑え込めているが

 ――コロナ患者の増加により、日本は医療崩壊しているのでしょうか。

 昨春にイタリアや米国ニューヨークで起こったような状態を医療崩壊と定義するなら、少なくとも日本の現状はこうした「医療崩壊」ではありません。

 今の日本はまだコロナが抑え込めている状況のもとでの医療と言えます。実際に抑え込めなくなった医療は全然違う。こんなものではないでしょう。日本では、一般の患者さんも、新型コロナの患者さんも、いま受けられる最高水準の医療をなんとか受けられる状態です。

 ――「医療崩壊」の定義はあるのですか。

 通常受けられるはずの医療を受けられない状況になること、と定義する人もいますが、救急の病床がいっぱいで、他の遠くの地域へ救急車が行くことは今でも結構起きているので、この定義を当てはめると、コロナ前から医療崩壊はあったことになります。

 ――欧米の病院で、廊下にまで患者があふれかえっている映像を見ました。

 欧米から見れば日本の状況は「医療崩壊」のまだまだ「入り口」ぐらいのレベルです。欧米では患者さんを病院に受け入れられず、集中治療室(ICU)にも一定の割合で重症患者が入れない状況です。

ICUの崩壊が最初のステップ

 ――日本もICUになかなか入れない事態が生じています。

 受け入れられるキャパを超えて、重症患者に手厚い治療ができなくなる、というのが最初のステップになるでしょう。欧米ははるかにそれを超えていますが、日本でも、そろそろ危険なレベルに近づいていると思います。

 たとえば、集中治療室(ICU)で患者を診きれない状態が出てきています。本来ICUに受け入れられたら助かったかもしれないという患者が、もっと出てくるでしょう。一般の病院の多くは、人工呼吸器はありますが、体外式膜型人工肺(ECMO(エクモ))などの高度な呼吸管理は難しい。入院患者さんを今まで通り手厚くできないというフェーズにはいっていくと思います。

 ――ICUの受け入れ能力が鍵になるのですね。

 一定の割合で出てくる重症の…

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