第2回プーさん抱いて眠った日に 息子と見た夜景をもう一度

有料記事そこに光が

千種辰弥
【動画】美しく、そして悲しい夜景 街の明かりにはしゃいだ4歳は=動画制作・西田堅一
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 うねる坂道を車で15分ほど上り、展望台に着いた。

 左奥の関西空港から右端の神戸港まで、眼下に夜景が広がる。刺すような真冬の風が澄んだ空気を揺らし、街の光がまたたく。

 「わぁ、すごい」

 4歳の和夫くんは、柵から身を乗り出すようにして見つめていた。

 「ぼちぼち行こか」

 宮原寿夫(ひさお)さんは和夫くんをせかし、ふもとにある兵庫・芦屋の家に帰った。

 この日は昼に神戸の教会で知人の結婚式に出ていた。はしゃぎすぎて疲れたのか、2階の布団に入るとすぐに寝息を立て始めた。

 腕の中には、両耳と鼻がかじられてなくなったクマのプーさんのぬいぐるみ。生まれたときにもらい、どこに行くにも連れていくお気に入りだ。

 深夜、仕事を終え帰宅した妻の喜代子さんと3人で川の字になり、寝ていたところを激しい揺れが襲う。

 家は築70年近い木造2階建ての一軒家。崩れたはりやたんすの下から近所の人に助け出されたころには、外は明るくなっていた。

 寿夫さんはぐったりした和夫くんを抱きかかえてジープに乗り、病院をめざした。医師はおらず、自分で小さい口に息を吹き込み、胸を押し続ける。

 しばらくして来たのは別の医院の耳鼻科医。注射を1本打ち、胸を押すと「ガバッ」と音がした。

夜景の美しさに大喜びし、プーさんのぬいぐるみといつも一緒だった和夫くん。あの日から14年、両親はある決断をしました

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 「肺の中に血がたまっていま…

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