医療的ケア児に付き添う母 「通学したい」かなえたくて

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山下剛
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 「あしたの給食は何だろう」

 茨城県の水戸特別支援学校中学部3年の杉山あんじさん(15)は、学校に行くのが大好きな女の子だ。その代わり、母親の美香さん(37)が常に教室で付き添うことを求められている。あんじさんが人工呼吸器を使っているからだ。

 生まれつきアイセル病という先天性代謝異常があるあんじさん。身長も1メートルほどで、目が大きい。言葉を話すことはできるが、移動は車いす。特別支援学校の小学部に入学する前に呼吸不全を起こして気管切開し、その後、人工呼吸器を使っている。

 入学当初は入退院を繰り返していて、病院の院内学級や、教師が自宅を訪れる訪問教育を受けていた。

 6年生になって病状が落ち着くと、あんじさんは「通学したい」と言い出した。スクーリングで久々に登校したとき、同級生が覚えていてくれたのがうれしかったという。

 茨城県教育委員会との交渉の末、中学部に進学してから通学することになった。ただし、母親の美香さんが常に付き添って、たんの吸引などのケアをすることが条件とされた。

 美香さんは毎日、あんじさんを連れて登校し、同じ教室の、パーティションで仕切られた内側で待機している。学校には看護師も配置されているが、ケアが必要になるとすぐに呼ばれる。

 付き添いが始まって間もないころ。美香さんがトイレに行くと、先生があんじさんを連れてトイレの前までついてきた。「これでは給食中でもイベント中でも、私がトイレに行くたびに娘は中座することになる」。美香さんは仕方なく、膀胱(ぼうこう)の活動を抑える薬を飲んで、トイレに行く回数を抑えていたという。

記事の後半では、地域によって大きいケアの格差の実態や、先進的な取り組みをしている自治体の事例を紹介します

 シングルマザーとして3人の…

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