クイズ王伊沢拓司はCEOになった ついに見つけた戦略

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西本ゆか
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 「全国高等学校クイズ選手権」で17歳の時に番組初の個人2連覇を決め、東京大学在学中から「クイズ王」として活躍してきた伊沢拓司さん。26歳の今は、クイズなどの娯楽を通して新たな「学び」を発信するメディアサービス会社「QuizKnock(クイズノック)」を率いるCEOでもあります。愛するクイズのこと、自分のこと、経営者としての目標。たっぷり語ってくれました。

 ――人生を大きく変えたクイズとの出会いは?

 プロも夢見たサッカーで実力がないと悟ったのが小学3年のとき。「自分を肯定する何か」を失っていた僕が、進学した開成中学で出会ったのがクイズ研究部です。部員8人の弱小部で、備品の「早押しボタン」も1人1台使って練習できた。練習するほどに強くなる実感があり、8人の中で1番になれることが増えていき、クイズそのものより、「勝てる」自分に誇りを感じていました。

 一方で、優勝者が1人のクイズでは負けも日常です。でも負けに慣れ、悔しいと思わなくなってはだめ。早押しで一つでも正解できれば、それは「勝ち」です。そんな「小さな勝ち」を握りしめ、負けた悔しさも忘れず、次に生かす。クイズで学んだこのバランス感覚が、人生の礎になっています。

「知ってるから偉いのか」クイズ王伊沢拓司を叱ったのは

 小学校の授業中、教師が「夏も近づく八十八夜♪」と口ずさみ、題名を問うた。クラスで唯一手を挙げたのは、のちの「東大卒のクイズ王」伊沢拓司さん。だが教師は厳しく叱った。

起業への道のり

 ――東大在学中の22歳で、ウェブサイト「QuizKnock」を作ります。

 バイト先の塾で、ネットにあふれる情報への対処法を学ぶ場のない生徒らを見て「自分にできることはないか」と考えたのがきっかけ。僕自身、誤った情報が氾濫(はんらん)する世界では生きづらいと感じていたこともあります。文章を書くのが好きだったので、僕が編集長になり、「クイズとニュース」を組み合わせたウェブ記事で正しく情報を伝えるメディアを作りました。

 ――起爆剤は翌年開設のユーチューブチャンネル。提案したふくらPさんに最初は反対しましたね。

 人も資金も余裕がなく、手を広げればパンクすると思いました。我ながら直感力がない。でもその自覚があるから人の話を聞ける。反対したのに、しばらくしてふくらさんから「この日動画を撮るから」と言われ、「じゃあやるか」と。「クイズ系ユーチューバーはまだいないからうまくいく」と確信したふくらさんの先見性は、さすがでしたね。結果は大成功。人気コンテンツが次々生まれ、今では収益の大きな柱です。社会的認知度も飛躍的に上がり、企業や公的機関との提携など、次のステップへの推進力にもなりました。

 ――2019年には株式会社化を果たします。

 ユーチューブの成功で組織が拡大し、会社化が検討され始めた時期でした。ただ僕から見れば仲間に助けられ、状況に流されたことで得た結果。「自分」がなすべきこと、やりたいことを考え続け、たどりついたのが「楽しいから始まる学び」というフレーズです。

 僕も嫌いな科目の勉強は嫌いでした。

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 でも好きなことの知識を得る…

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