第3回事故後対応の矢面は東電に 救済策に隠された政府の思惑

有料記事東電「国有化」の実像 原発事故から10年

大津智義 編集委員・大月規義 古賀大己
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 東京電力原発事故の賠償責任を負うことが決まったときから、自力でその資金負担に耐えられないことは、明らかだった。賠償に何兆円かかるかも、廃炉に何年かかるかも分からない。稼ぎ頭だった原発が停止し、代わりの火力発電のための燃料費も巨額に上っていた。

 しかし、政府は東電を破綻(はたん)させるつもりはなかった。事故を起こした責任者である東電には、事故収束後も廃炉を進めつつ、被災者と向き合って賠償を進めてもらう必要があると考えたからだ。そこには、事故後の対応の矢面に立ちたくないという政府の狙いが透ける。

 当時を知る財務省OBはこう解説する。「もし国が前面に立って賠償していたらずるずると後退した。被災者と国が対峙(たいじ)したら、とてもじゃないが説得できない。際限なく国費が投入される。そういう懸念がもちろんあった」

 別の財務省OBによると、東電が倒産すれば、仕組み上は、金融機関などの債権が優先的に弁済され、被災者への賠償が後回しになる可能性が高かったという。さらに、まだ冷温停止もしていなかった原発の事故処理を着実に進めることや、電力不足に直面した首都圏への電力供給を安定させることも喫緊の課題だった。当時、それらは東電にしかできないという意見が多かった。

 東電の救済策づくりを担うことになったのは、2011年4月11日、内閣官房に設けられた「原子力発電所事故による経済被害対応室」だった。

東京電力福島第一原発事故の賠償責任について、東電の免責は認められず、東電は巨額の賠償金の支払いを背負い込むことになりました。それでも東電が破綻(はたん)しなかったのはなぜなのか。そこには、国の隠された意図がありました。

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 約1カ月後には、東電の通期…

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