吹奏楽部員に舞台を…思い出演奏会、楽器店主が奔走

菅野みゆき
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 【岡山】コロナ禍で高校の吹奏楽部員は公演の機会を次々と失った。1年の最後に、そんな部員らに晴れの舞台をプレゼントしようと倉敷市の楽器店主が奔走。20日、9校が集い、「全力吹奏楽部思い出演奏会」と題したイベントを倉敷市で開く。

 会場は中止となった県吹奏楽コンクールが開かれるはずだった倉敷市民会館。県南部にある倉敷南、倉敷中央、倉敷古城池、倉敷商業、倉敷青陵、倉敷天城、岡山芳泉、岡山一宮、岡山操山の9校がステージに上がる予定だ。

 企画したのは同市宮前で楽器店を営む中川啓(けい)さん(46)。自身も中高の吹奏楽部でトランペットを吹いていた。洗足学園音大(川崎市)を卒業し、父が創業した楽器店を継いだ。

 各校の演奏会の案内を置いたり、入場券の取り次ぎをしたりなど吹奏楽に特化した店へと姿を変え、今では訪れる部員の相談に乗るなど「吹奏楽部みんなのマネジャー」を自称する。

 コロナ禍で演奏会の中止が続いた今年。中止が決まり、謝りに来る部員らに胸がつまった。「君らのせいではない」と諭す一方、「仲間と演奏する機会をつくってやりたい」と考えるようになったという。

 ただ店の経営も楽ではなく、資金をどう工面するかが難題だった。そこで思いついたのがクラウドファンディング(CF)。10月下旬に募り始めると、目標の200万円を上回る約270万円が集まった。会場費や非接触体温計、空気清浄機などの購入費に充て、今後は各校の演奏会などにも活用するという。

 当日の感染防止には最大限の気を配る。舞台上のメンバー入れ替えは、通常3分のところを10分にして生徒の接触を極力避ける。客席からの応援は拍手のみとし、保護者らは交代で鑑賞する。

 20日の開会式で演奏予定の岡山操山の部長・五百簱頭美侑さん(2年)は「これが最後の機会かもしれない。精いっぱいの演奏で、皆さんに喜んでほしい」と意気込む。

 中川さんは「音は自分に残っていくもの。大人になった時にその響きを思い出して人生の糧にしてほしい」。演奏会は20日正午スタート。インターネットで生配信され、中川楽器のホームページ(https://www.nakagawagakki.com/別ウインドウで開きます)から視聴できる。

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