イスラエル、過去2700人も暗殺? 制度化し首相決裁

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 イランの核開発を主導してきた科学者が、11月末に首都テヘラン郊外で暗殺されました。イラン側は敵対するイスラエルが事件に関わったと非難し、イスラエルの対外情報機関モサドの関与が取りざたされています。モサドと言えば「世界最強」とも言われる情報機関ですが、いったいどんな組織なのでしょうか。インテリジェンス(情報収集・分析)機関の研究が専門で、『モサド』(早川書房)の著書がある日本大学危機管理学部の小谷賢教授に聞くと、イスラエルの安全保障において重要な役割を担う情報機関の実態が見えてきました。

 ――イランでは過去にも核開発に関わる科学者が暗殺され、同じようにイスラエルの関与が疑われました。なぜイスラエルが疑われるのですか。

 イスラエルは、イランに限らず中東での核開発の動きが、イスラエルの安全保障にとって重大な脅威になるとして、その動きを事前に封じてきました。例えば1981年にはイラクの建設中の原子炉、2007年にはシリアの原子炉をそれぞれ空爆しました。

 ――イランに対しても同じように核施設を空爆するという選択肢はないのですか。

 まずは距離の問題があります。イスラエルはイランと接しておらず、爆撃をするためには隣国のシリアやヨルダンなどを通らなければなりません。これらの国が領空の通過を認めないことが考えられました。イラン側もイスラエルの攻撃を恐れ、ロシア製の対空ミサイルなどを備えていることに加え、核施設の一部も地下にあり、破壊は簡単ではないという理由もあります。

 イスラエルのネタニヤフ首相はイランへの強硬姿勢から軍事攻撃を主張してきましたが、歴代のモサド長官がこうした理由からイランへの攻撃はリスクが高いと判断し、モサドによる秘密工作でイランの核開発の動きを止めようと考えたのでしょう。その手段の一つが、核開発に関係する学者らの暗殺だったと考えられます。

「整理」「処理」と言い換えも

 ――国の安全保障のためだとしても、暗殺行為が繰り返し行われていると聞くと驚きがあります。

 暗殺はイスラエルの政治制度に組み込まれており、その手順が定められている、と言われています。

 ――どのような手順なのですか。

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 まずは各国にいるモサドの諜…

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