「解体見るのは…」白鳥の遊覧船に危機 引き受け手探す

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上田真仁 力丸祥子
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 福島県の猪苗代湖にいる大きな白鳥と亀の行く末が見えなくなっている。長年、湖のシンボルとして親しまれた遊覧船「はくちょう丸」と「かめ丸」のことだ。コロナ禍で運航会社が倒産。湖を管理する県が解体しなければならない可能性もあり、引き受け手を探している。

 猪苗代湖の北岸。冷たい風が吹く桟橋に金色の王冠をかぶったはくちょう丸が係留されている。後ろにはかめ丸。クリッとした丸い目が特徴の2隻は、どことなく寂しげだ。

 「もう一度、お客さんを乗せて湖を走る姿を見たい。その一心です」

 船長歴40年を超える元従業員の男性(66)はつぶやいた。

 運航する地元の会社「磐梯観光船」は、2011年の東京電力福島第一原発事故の後、風評のあおりを受けて利用者が激減。それでも集客に知恵を絞り、昨年度は約1400万円の黒字を計上した。

 だが、コロナ禍で4月中旬から営業を自粛。約15キロ離れた裏磐梯の檜原湖の2隻を含め、所有する全4隻の運航を見合わせた。事業が立ちゆかなくなり、6月15日、福島地裁会津若松支部に破産申請した。従業員約10人は解雇された。

 2隻はいずれも2階建てで、定員約150人。35分ほどかけて近くの翁島などをめぐるコース(大人1300円、子供650円)が人気だった。

 廃業を知らせた同社のフェイスブックには「娘も乗せてあげたかった」「デートした観光船。素敵な思い出ありがとう」などのコメントが相次いだ。

 男性は夏には再開するつもりで自宅待機を続けたが、「まさかそのまま破産するとは」と肩を落とす。

 今も週に数日、船が桟橋にぶつからないよう係留ロープの長さを調整したり、バッテリーが上がらないようにしたりしている。「きれいな状態で誰かに引き継ぎたい。解体を見るのだけは、つらい」

町長も破産管財人も「だれか引き継いで下さい」

 猪苗代湖は東京都内から車で約3時間。遊覧船は首都圏からの観光客も多く乗せ、時代を超えて愛されてきた。

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