総裁選敗北後に語る理想 岸田氏「核兵器のない世界へ」

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編集委員・藤田直央
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アナザーノート 藤田直央編集委員

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 師走に入り、東京では風が冷たくなりました。マスクが防寒具的になじんできた藤田直央です。

 この「アナザーノート」で9月の自民党総裁選を取り上げた際に軍縮について考えましたが、菅義偉氏に敗れた広島出身の元外相・岸田文雄氏(63)がその後に本を出しました。タイトルは「核兵器のない世界へ」。総裁選で私が質問した立候補会見や、候補者討論会では控えめな主張だったのに……。思いを直接聞こうと、東京・永田町の事務所を先月訪ねました。

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 このインタビューの少し前には、核兵器の保有・使用に加え威嚇まで禁じる核兵器禁止条約の批准国・地域が発効条件の50に達して大きな話題になり、核保有国とともに条約に加わらない日本の姿勢が改めて問われていました。唯一の戦争被爆国として核兵器を持たないが、自らを守るために米国の核の傘に頼る。そのジレンマに安倍内閣で外相として4年8カ月間向き合い続けた岸田氏ですが、語り口は思いのほか歯切れのいいものでした。

 「核兵器禁止条約は核兵器なき世界への出口です。核軍縮の枠組みとしてはすでに、核保有国も参加して1970年に発効した核不拡散条約などの入り口がある。これを出口につなげる努力が必要です」

 「核兵器の数や役割、そもそも核兵器が必要とされる国際社会の緊張を減らし、核保有国が核兵器禁止条約に参加できる状況に近づけていく。そんなシナリオを外相の時から唱えています」

 そして、核保有国と他国の橋渡しをするため核兵器禁止条約に加わらないとする日本政府の役割について、こう述べました。

 「このシナリオの中で、核の傘の下にいる日本が核軍縮を訴えることは矛盾しない。米中など核保有国と対話して緊張を緩和し、出口へ向かう。その大きな道義的責任が被爆国日本にはあります」

 しかし話を聞くうちに、疑問も湧きました。

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