「何でここだけ…」「震源地」と呼ばれた街ミナミ
看板に光がともる師走の街。まだ午後9時なのに、終電後のように人影は少ない。路上で退屈そうにたばこをくゆらす客引きの脇を、時折「空車」のタクシーが通り過ぎる。
大阪の「夜の街」を代表する繁華街・ミナミ(大阪市中央区)はこの冬、新型コロナウイルス感染拡大による3度目の休業、時短営業要請のただ中にある。
「まるでばい菌扱いですね」
藤本暢子(ようこ)さん(49)は、マウスシールド越しにため息をついた。高校卒業後、大手化粧品会社に就職。23歳で結婚し、長女を出産した。30歳での離婚を機にミナミのクラブで働き始め、13年前に独立してクラブ「藤本」を開業。現在ラウンジ、スナックと合わせ三つの店を経営し、男性スタッフを含め100人近い従業員を抱える。
「ミナミは危ない」というイメージが定着したのは、夏の「第2波」だった。感染拡大に伴い8月、大阪府の吉村洋文知事はミナミについて「感染拡大の震源地になっている」として接客や酒類の提供を伴う飲食店に休業と営業時間の短縮を要請。対象は長堀通、千日前通、御堂筋、堺筋に囲まれたごく一部のエリアに区切られた。
「藤本」はまさに要請区域のど真ん中にある。
「笑いしか出なかった。裏なんばやアメ村はいいのに、何でここだけって」
店内では検温、消毒はもちろ…