アニメ映画の興行収入が米映画「タイタニック」(1997年公開、262億円)を超えて歴代2位となり、4日にマンガの最終巻となる23巻が発売された「鬼滅の刃」で、主人公の竈門(かまど)炭治郎と闘う一方の主役は鬼だ。妖怪研究で知られ、「鬼と日本人」(角川ソフィア文庫)の著書もある小松和彦・国際日本文化研究センター名誉教授は、「鬼滅の刃」は、日本に古くからある「鬼退治の物語」と共通の特徴があるという。小松名誉教授に詳しく聞いた。
「酒呑童子」との共通点
「鬼滅の刃」は、日本で古くから語られてきた鬼退治の物語を継承していると思います。鬼は、人間社会に恨みを持っていて、復讐(ふくしゅう)しようと攻撃を仕掛けてくる。道具が鬼になる付喪(つくも)神など、鬼の形にもいろいろあるのですが、「鬼滅の刃」と同じく人間起源の鬼としては、「酒呑童子(しゅてんどうじ)」や「橋姫」がよく知られています。
「酒呑童子」は、「お伽草子」と総称される説話群に含まれている「妖怪退治譚(たいじたん)」の代表例ですが、最も古い逸翁美術館蔵「大江山絵詞」(14世紀ごろ)によると、鬼の首領の酒呑童子が丹波の大江山に住むようになったのは、最澄や天皇に領地を追われたからなんです。元々は貴族の子女だった「橋姫」が鬼になったのは、ある女性への嫉妬からでした。酒呑童子は源頼光に首をはねられ、橋姫は渡辺綱に片腕を切り落とされてしまうのですが、この二つの物語には、酒呑童子や橋姫が鬼にならざるを得なかった事情についても記されていているんですね。「鬼滅の刃」の鬼たちも様々な事情を抱えていて、仕立ては、昔からの鬼退治の物語と共通しています。
鬼退治の物語だけでなく、色…
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