バイデン氏も悩んだ吃音 マンガに描いた嘲笑と涙と希望

有料記事

小川裕介

 うまく話せないことがある吃音(きつおん)をからかわれ、一時は人と話すのに恐怖を感じていた女性(33)が、就職して働きながら自分の体験を漫画にまとめた。次期米大統領のジョー・バイデン氏も悩み苦しんだ吃音に対する社会の理解はまだ進んでいない。「私を助けてくれた言葉がもしかすると他の人の助けになるかもしれない」と考え、ペンをとった。

吃音ある就活生に過去の自分が重なる

 2年前、インターネットテレビABEMAで、吃音がある男子学生が就職活動で苦戦する姿を特集した番組(https://abema.tv/video/episode/89-82_s15_p1別ウインドウで開きます)を見たときだった。

 その瞬間、吃音で苦しんだ記憶が突然鮮明によみがえる「フラッシュバック」が起きた。面接で思うように考えを伝えられない男子学生と自分が重なり、番組を見続けられなくなった。

 「傷がかさぶたになっていただけで、治ってはいなかったんだ」

 女性には3歳のころから、最初の音を繰り返すなどの吃音があった。小学校の音読では、発しにくい言葉をわざと飛ばして吃音を隠した。中学校では、全校生徒の前でクラス紹介を頼まれても断った。いつも人前で目立たないようにしていた。

 中学や高校では、からかわれた記憶はない。だが、大学時代に飲食店でアルバイトをしたときだった。

 「話し方、すっごいヘン」

 同僚たちの言葉が胸に突き刺さった。

 慣れない仕事とストレスで、吃音は悪化した。人と話すのが怖くなり、自信を失った。大人になれば吃音は治ると思っていたのに、二十歳を過ぎても治らないままだった。

 人と話すのが怖いままでは、目標とする社会福祉の道も絶たれるのではないか――。誰にも相談できないまま、自室でひとり泣いた。

 通学する山口県立大で、大石由起子准教授の臨床心理学の講義を受けたのはそんなときだった。吃音について説明するのを聞き、大石さんの研究室に飛び込んだ。

 「きっ、吃音って治りますか?」

 突然の来訪を受け入れてくれ…

この記事は有料記事です。残り3562文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
小川裕介
西部報道センター|事件キャップ
専門・関心分野
核・原子力、感染症、調査報道