ダム計画の前にできることを 吉松啓一・相良村長 熊本
――蒲島郁夫知事が球磨川水系流域の市町村長らに意見を聴く会では、宅地や堤防のかさ上げ、遊水地などを要望しました。
「豪雨前から要望していました。しかし下流域と違い実現していないところがほとんどです。住民は不満をもっています」
――自身の考えは。
「村には(川辺川ダム計画に)賛否があります。迷っている人もいます。村民の考えが全て。ダム本体の建設予定地だからこそ、判断には慎重にならざるを得ません」
「村民は川とともに生活しています。小学生は登下校で川を毎日見ています。そうやって育つから、自然の豊かさや脅威、恵みは染みついてわかっています。豪雨で犠牲者が出なかった理由はそれだと思います」
――2009年に民主党政権が川辺川ダム計画を中止した後、国と県、流域市町村はダムによらない治水を検討してきました。
「机上の話で終わってしまいました。何も実行されていないのに、(ダムによらない治水の)効果がないというのはおかしい。村は10年間何も変わっていません。まずはできることをしてほしいのです」
――06年に当時の矢上雅義村長が川辺川ダム計画反対と利水事業不参加を表明し、流域市町村でつくるダム建設促進協議会に脱会を通知しました。08年には当時の徳田正臣村長が計画を「容認しがたい」と述べました。その後、蒲島知事は計画の「白紙撤回」を表明しています。当時の村長の判断をどう考えますか。
「そのときの考えということでしょう。ダム建設のため60世帯が移転しました。未買収地の強制収用手続きに入るよう国に陳情した歴史もあります」
――計画公表から半世紀が経ちました。
「人も自然も変わりました。当時の計画そのままでは誰も納得しません」
「みなさんが言うのは清流を守ってほしいということ。蒲島知事から治水の方向性が示されれば、清流が守られるのか、村民の要望が守られるのかを県に問いたいと思います」
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