ゲーセンで使った1万円 じいちゃんが教えてくれたこと

有料記事いつも、どこかで

若松真平
[PR]

 大学卒業後、葬儀会社で2年半働いた飯谷祐美さん(29)。

 今年3月、愛知県弥富市に住む祖父・犬飼房吉さんが83歳で亡くなった、と知らせを受けた。

 1年ほど前にレビー小体型認知症とわかり、会いに行っても誰かわからないようで、名前を呼んでくれることはなかった。

 亡くなる1週間ほど前に自宅で転倒して入院。新型コロナウイルスの影響で面会も制限され、最後のお別れもできなかった。

 それでも後悔はなかった。心の中にこんな思いがあったからだ。

 「人生は自己満足だ」

 仕事で多くの故人を見送ってきて、その思いは強くなっていた。

葬祭会社に就職

 2013年4月、大学を卒業してすぐに愛知県一宮市の葬祭会社に就職した。

 志望したきっかけは、就職活動中に親戚が亡くなったこと。

 一番見送ってあげたかったであろう親戚の娘2人が、通夜や葬儀の手配で忙しくしている姿を見て思った。

 「私は自分の親が亡くなった時、どうするんだろう。ちゃんと送ってあげられるのだろうか」

 実際に働いてみることで、事情を詳しく知っておこうと考えた。

 入社して先輩の後ろにつきながら、一連の流れを学んだ。

コショウ汁を飲む理由

 最初のころ、遺族が棺に花を入れながら涙している場面で、自分も泣いてしまった。

 先輩から「次、次! 時間見て」と言われて我に返った。

 ある地方では、故人を送るにあたって「コショウ汁」を飲んでいた。

 由来を聞いたら「涙を我慢しないで、コショウのせいにして思いっきり泣けるように」と教わった。

 高齢男性の葬儀で、施設に入っている認知症の妻が、子どもたちに抱きかかえられてお別れをしていたことがあった。

 夫の顔を見ても誰かわかっていないようだったが、最後に「次も一緒になろうね」とつぶやいたことに一同驚いた。

ここから続き

 勘当された息子が、母親の葬…

この記事は有料記事です。残り1941文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら