レトロな趣を観光目玉に 三重・玉城町の田丸駅

安田琢典
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 明治期に建てられ、巨匠、小津安二郎監督の映画「浮草」(1959年)のロケ地にもなった三重県玉城町の田丸駅。130年近い歴史があり、独特の趣があるこの木造駅舎を町の新たな観光資源にできないか――。文化財の保護や活用に力を入れる同町は駅舎の利用方法を模索している。

 田丸駅は参宮鉄道が津駅から宮川駅(伊勢市)まで開通した1893(明治26)年に建てられ、開業した。当時は「鉄道開通で宿場町が寂れる」などと反対運動が起きたが、荘司守・初代町長らが住民の説得を続け、紀州藩田丸領の家臣だった金森家が私有地を提供するなどして開業にこぎ着けた。1912(大正元)年には増改築され、現在の形になった。

 乗降客の減少などから、田丸駅は2012年10月、無人化された。ところが、近くにある田丸城跡が日本城郭協会の「続・日本百名城」に選ばれた17年から、駅は別の形で注目されるように。町総務政策課の永井友樹主任主事(36)は「訪れた観光客から『レトロですてきな駅舎がある』と評価されるようになった」と話す。

 近年、老朽化した駅舎が建て替えられるケースもあり、第6次総合計画の策定を進める町は昨年12月、田丸駅の駅舎の存廃について住民にアンケートを行った。その結果、6割が「保存しながら駅舎として活用」と回答。昨年8月に行った駅の利用者の意識調査でも、9割近くが「残すべきだ」と答えたという。

 昨年7月、老朽化したJR関西線の加太駅を無償でJR西日本から譲り受けた亀山市の事例もある。同市は、駅舎を歴史観光資源として活用する方針で、永井主任主事は「玉城町も、田丸駅を保有するJR東海から譲渡を受けられれば、現在は町にない観光協会のような組織を立ち上げ、その拠点として活用できるのでは」と話す。

 田丸駅は、県指定史跡の田丸城跡と、町指定文化財の「玄甲舎(げんこうしゃ)」のほぼ中間に位置する。金森得水(1786~1865)の茶室兼別邸の玄甲舎は改修工事を終え、今年6月に一般公開された。これに加えて、伝統の駅舎を整備、活用すれば、さらなる誘客につながる可能性が高まる。

 7日にはJR東海が田丸駅を発着点とするイベント「さわやかウォーキング」を開催する。昨年のイベントには500人を超す参加者があったといい、町は今年のイベントに向け、駅のスタンプを役場隣の村山龍平記念館に設置した。

 駅の入り口には、町内で作られた特産品のしめ縄が飾られている。永井主任主事は「町内観光の目玉として田丸駅をアピールしていきたい」と話している。

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