明治期のSL「まだ走れる」 オーバーホールの寄付募る

荻野好弘
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 愛知県犬山市の博物館明治村は、長年走らせながら展示している蒸気機関車(SL)を解体修理(オーバーホール)するための基金を設けた。明治期のSLが現役で走るのは全国でも珍しく、費用の一部をまかなうため、1千万円を目標に寄付を呼びかけている。

 明治村には、新橋―横浜間で鉄道が開業した2年後の1874(明治7)年に英国から輸入された12号と、1912(明治45)年に米国から輸入された9号の2両のSLがある。12号は同区間を走った後、尾西鉄道(現名古屋鉄道尾西線)で使われた。9号は富士身延(みのぶ)鉄道(現JR身延線)などで活躍した後、明治村に譲渡された。

 2両とも74(昭和49)年から明治村で動態展示され、客を乗せた明治末期の客車を引き、村内の2駅の間をゆっくりと往復してきた。定期的に部品単位まで解体して検査や修理をすることによって、安全に運行を続けられるという。

 明治村によると、12号は昨年秋、静岡県の専門会社へ約8年ぶりに解体修理に出された。ボイラー内部の84本の煙管(えんかん)を取り換えるなどし、今年夏に戻った。運転に向けて車庫で細かな整備が続けられている。

 今回募る寄付は、まずは9号の維持にあてるのが目的。22年ごろに解体修理を予定しており、こちらも約8年ぶりとなる。

 実際にかかる費用について、担当職員で機関士の近藤雅隆さん(46)は「車両を解体してみないと。特注部品をどのくらい交換するかによっても違う」と話すが、過去の例から数千万円が見込まれる。入村料や乗車料などでまかなっていたが、費用の一部に寄付金をあてることで貴重な産業遺産への思いを共有し、明治村ファンを増やしたいという。

 「基金に賛同いただける方々の力をお借りして、少しでも長く安全に走らせたい」と近藤さんは言う。

 「オーバーホール基金」は、「鉄道の日」の10月14日にスタート。2週間程度で約200万円の寄付が集まった。寄付は1口1万円から、クレジットカードや振り込みなどで。金額に応じてSLポストカードやレールを使用した文鎮、SL撮影会招待などの返礼品を用意している。詳細は明治村ホームページ(https://www.meijimura.com/information/news/001957.html別ウインドウで開きます)で。(荻野好弘)

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