JR北海道の単体売上高、半減の見通し 来春減便の方針

長崎潤一郎
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 新型コロナウイルスの影響による旅客需要の急減が、JR北海道の経営を直撃している。単体ベースの2021年3月期決算の売上高は、前年同期比でほぼ半減する見通しだ。JR北はコスト削減のため、来年3月のダイヤ改定で札幌圏を含む幅広い路線で減便に踏み切る。

 14日の定例会見で、21年3月期の新型コロナによる減収額が、単体ベースで400億円にのぼるとの見通しを明らかにした。20年3月期(単体)の売上高は875億円、営業損益は521億円の赤字だった。

 JR北の単体決算は鉄道事業が大半を占める。5月時点で鉄道事業の減収額は200億~300億円としていたが、大幅に減収幅が拡大する。損益の見通しは明らかにしなかった。

 9月単月の鉄道運輸収入(速報値)は、前年同月比46・9%減の43億1200万円。6割減だった4~6月より改善してはいるが、なお減少幅は大きい。ホテルや商業施設を手がけるグループ会社の業績も軒並み悪化しており、連結決算でも大幅な業績悪化が見込まれる。島田修社長は会見で「当社発足以来の大変厳しい状況に追い込まれている。事業の継続に全力で取り組む」と述べた。

 役員報酬の最大40%減額を来年3月まで延長するなどの人件費削減、出張の見直しなどの業務費削減、経営安定基金の運用益の上積みなどで50億円規模の収支改善をめざすという。資金繰りについては、固定資産税社会保険料の支払い猶予などのほか、金融機関からの650億円の融資枠もあり、当面は問題ないとしている。

 厳しい経営状況を受け、来年3月のダイヤ改定では減便を行う。今年3~6月の一時的な減便からさらに踏み込んだ対応でコストを削減する。「(将来的な)要員削減につなげることができる」(島田社長)としている。

 詳細は今後詰めるが、普通列車では、主力の札幌圏を含め、通勤・通学利用への影響が少ない時間帯を中心に減便する。新千歳空港と札幌圏を結ぶ快速エアポートの減便も検討する。

 観光や出張利用が減少している特急列車は、札幌から函館方面に向かう特急北斗、旭川方面に向かう特急カムイ・ライラック、旭川と網走を結ぶ特急大雪などの本数を減らす。札幌から帯広・釧路方面に向かう特急おおぞらは本数は維持するが、現在の6両編成から5両編成に減車する。

 駅の廃止も加速する。利用者が極端に少ない36駅のうち、18駅程度を廃止する方向で自治体と協議している。存続させる駅でも維持費を自治体に負担してもらう。コスト削減効果は、減便・減車で年5億5千万円、駅の廃止などで年5千万円を見込む。

JR北海道が来春のダイヤ改定で検討する減便

【特急】

▽札幌―函館(特急北斗)

定期列車24本→定期20本+臨時2本

夜間帯で上下1本ずつを取りやめ。他の上下1本ずつを臨時列車とし、利用状況に合わせて年30日程度は運休

▽札幌―旭川(特急カムイ、ライラック)

定期列車48本→定期44本+臨時4本

上下2本ずつを臨時列車とし、土日祝日や繁忙期をのぞき年230日程度は運休

▽旭川―網走(特急大雪)

定期列車4本→臨時4本

すべて臨時列車とし、年50日程度は運休

▽旭川―稚内(特急サロベツ)

定期列車4本→定期2本+臨時2本

上下1本ずつを臨時列車とし、年30日程度は運休

【普通】

▽札幌圏(札沼線・桑園―北海道医療大学、函館線・札幌―岩見沢、小樽―札幌など)

計10本程度を減便し、土日祝日はさらに10本程度減便

▽その他の路線(函館線・滝川―旭川、留萌線、石北線、宗谷線・旭川―名寄、根室線・滝川―新得、新得―帯広)

10本程度を減便

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この記事を書いた人
長崎潤一郎
経済部|首相官邸担当
専門・関心分野
エネルギー政策、税制