全収蔵作並べた欲張りな展覧会 福永信のむちゃぶりで

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田中ゑれ奈
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 「美術館を見くびるなよ!」。展示空間の四方八方から、そんな雄たけびが聞こえてくるようだ。開館30年目を迎える兵庫・芦屋市立美術博物館の「大コレクション展」。企画協力を務めた小説家・福永信(しん)の大いなる口出しのもと、全収蔵作家126人の約180作品が「密集」する欲張りな展覧会となった。

 鑑賞は2階まで吹き抜けになった円形ホールから始まる。ゆったり横たわるのは、縦に裂けた細長い板を斜めに寝かせた白髪富士子の「白い板」。その水平の印象とは対照的に、下半分の裂けた木材が「人」の字に見えるデイヴィッド・ナッシュ「内側/外側」と、立ち枯れた木のような戸谷成雄「雷神」が、天に向かってまっすぐ伸びる。

 「平べったく割れてる白髪に対し、ナッシュは屹立(きつりつ)している。同じように裂けていても、女性作家と男性作家で何となく性的な差が出てくるのが面白い」と福永。そう言われると、背後にある中村錦平の陶芸作品「ソレハ無意味ナ詮索(せんさく)」の混沌(こんとん)とした形に含まれる柱状のパーツまで、どこか意味深に見えてくる。

 作品は別の作品とだけでなく、置かれた空間とも呼応する。階段でバルコニーに上がると、鉛筆で塗り潰した紙に黒い角材を立てかけた松谷武判「流動 K-2」がある。それが、ホールの円周のちょうど反対側の壁に掛かる堀尾貞治と中川佳宣(よしのぶ)の彫刻と対峙(たいじ)する様を、福永は土俵に例えて「良い相撲が取れそう」。松谷の黒い帯のうねりが、淀井敏夫の彫刻や近藤南海子(なみこ)の平面作品にも表れるなど、歩を進めるごとに似た印象の作品に出合える工夫も楽しい。

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 圧巻は、絵画を中心に並べた…

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