第13回色あせる米国留学、トランプ氏に「屋外便所」と呼ばれて

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 「米国第一」と繰り返すトランプ大統領の政策は、排外主義として米国以外の人々を失望させてきた。かつては憧れの留学先だった米国から、世界の若者たちが離れ始めている。

 9月の平日夕方、北京の大学街に近い大手語学学校の相談室は、進学先を探す若者であふれた。窓の外には中国を代表する企業が並ぶオフィス街が見える。

 「米国、英国、オーストラリア。英語を学ぶなら、いろんな選択肢がありますよ」。指導員の男性の話を若い女性がみけんにしわをよせて聞いている。

 米国の留学生のうち中国人は約3割を占め、国別で最も多い。米国に留学し、帰国して外資や大手企業に勤めるというのが、中国の若者が描く典型的な成功モデルだった。だが、最近そんな状況に変化が生まれつつある。

 以前は米国への留学を考えていたという楊皓博さん(19)は「米国は銃社会。治安が心配だ」と話す。親の反対もあり、目標の留学先を英国に変えた。豪州留学を目指す大学生の女性(20)は「米国は人種差別がある」と語る。

 留学生派遣の業界団体、北京留学服務行業協会の桑澎会長は、米中関係が悪化するにつれ、中国では米国に否定的な報道が増えたと指摘。「子どもを送り出す保護者の考えに影響を与えている」と話す。

好感持つ中国人、1年で2割減

 実際、中国人の米国観は悪化している。米コンサルティング会社ユーラシアグループが今年4月に公表した調査結果によると、米国に好感を持っている中国人は約39%で昨年5月と比べて約20ポイント悪化した。

 国際問題を扱う北京のシンクタンク全球化智庫の王輝耀・理事長は、海外に敵をつくるトランプ氏の政策が「経済だけでなく、人的交流の切り離し(デカップリング)を引き起こしている」と語る。

 米国から距離を置き始めたのは中国だけではない。米国際教育研究所などによると、米国内の18年度の新規留学生は約27万人で、オバマ政権下だった15年度の約30万人をピークに3年連続で減少した。高額な学費などの影響でオバマ政権時代に始まった流れが、トランプ政権下で加速している。一方、隣国のカナダでは留学生が19年末で、前年比13%増加。豪州でも留学生は14年以降、前年比で10%前後増えている。

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