重度障害者が就労時の介助 さいたま市の制度に国が追随
重度障害者が働くと受けられなくなる介助を、市独自で提供してきたさいたま市は2日、今月から国と県からの補助が受けられるようになり対象が広がったことから、新たな利用者を募集することを明らかにした。導入を検討している他の自治体の多くは準備中で、同市は単独事業で先行する形となっている。
重度障害者は24時間、介助を受けられる「重度訪問介護」を使えるが、仕事をする時には使えない。このため、さいたま市は昨年度、重度障害者が在宅でリモートワークをする際の介助費用を負担する仕組みを単独事業で作った。今年度は5人が利用してきた。
働く重度障害者の介助は、昨年の参院選で初当選した、れいわ新選組の2人の国会活動をきっかけに加速した。対応を迫られた厚生労働省は、自治体が障害者福祉のために行う「地域生活支援事業」の対象に、通勤・就労時の身体的な介護を追加することなどを決め、これを10月に適用することになっていた。
厚労省は8月の社会保障審議会障害者部会で、13市町村が10月に実施予定としていたが、公表された12市町村に朝日新聞が確認したところ、今月スタートしたのは、さいたま市だけだった。多くが「準備中」などで、香川県三木町は「制度は整えたが利用者がいない」と答えた。
国の事業では職場や通勤の支援も可能だが、さいたま市障害支援課も「職場でどのような支援が必要なのかが把握できていないため、職場での介助はこれから」としている。
さいたま市によると、国と県から最高で4分の3の補助がある。対象者は単独事業の時の週20時間以上働く人から同10時間以上に広がった。自営で働く人も対象になった。市は新たな利用者の募集を進める。
この制度を前提に、10月から在宅で週2日程度働く予定の上野美佐穂さん(46)は、近く申請する。「短時間でも働きたいという思いを理解してくれた市に感謝しているが、時間の制限をせずに、望む人が当たり前に利用できる制度になってほしい」と話した。