保育士や莉菜被告の母親らが証言、札幌2歳児衰弱死裁判

前田健汰 川村さくら 榧場勇太
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 札幌市の池田詩梨(ことり)ちゃん(当時2)が昨年6月に衰弱死したとされる事件で、母親の莉菜被告(22)の交際相手で、傷害致死と保護責任者遺棄致死の罪に問われた藤原一弥被告(25)の裁判員裁判が30日、札幌地裁であった。詩梨ちゃんを預かっていた保育士や莉菜被告の母親が証言台に立った。(前田健汰、川村さくら、榧場勇太)

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 女性保育士は、預かっていた当時の詩梨ちゃんの発達状況を証言し、詩梨ちゃんが莉菜被告=保護責任者遺棄致死罪で起訴=から虐待を受けているとは感じなかったという認識を示した。

 証言によると、莉菜被告は昨年2月6日から札幌市の保育施設で一時保育を頼み、同14日から本格的に利用を始めた。4月24日まで利用を続けたが、この日を最後に、連絡がないまま預けなくなったという。

 施設の利用開始前に、莉菜被告から提出された詩梨ちゃんの健康診断結果は、身長や体重が同年代の平均を下回っていたが、特記事項の欄には「特になし」とあった。おむつの交換のため毎回、詩梨ちゃんの服を脱がせる機会があったが、2月ごろに額にたんこぶを見つけたほかは、けがはなかった。

 詩梨ちゃんの体格は「小柄で少しぽっちゃりしている印象」だった。施設が朝昼晩に出す食事は2歳児には多い量だったが、ほぼ毎回完食した。ストローで飲み物を飲み、練習中ながら一人でスプーンを使うこともできた。当時の様子について、検察官から「(莉菜被告から)虐待を受けていると感じたことは」と問われると、「ありません」と答えた。

 一方、言葉の発達については「2歳児で2語続けて出てこず、遅れているのかなと感じた」「『まんま』と言ったことはあるが、意味のある単語は出てこず『あー』とか『うー』とかだった」と明かした。こうしたことについて、莉菜被告からの相談はなく、自分から報告したこともなかったという。

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 午後には莉菜被告の母親が証言に立った。詩梨ちゃんと最後に会えたのは、詩梨ちゃんが亡くなる3カ月前だったといい、「とても寂しかったです」と振り返った。法廷では次第に莉菜被告らとの距離ができていった様子も語られたが、莉菜被告が育児ストレスを抱えていたとは感じなかったという。

 莉菜被告はもともと札幌市東区で母親と同居していたが、詩梨ちゃんの出産後に東区内の別の場所に引っ越し、詩梨ちゃんと2人で生活を始めた。このときは、もとの家が手狭になったため母親が転居を促していて、莉菜被告から合鍵を受け取っていた。ところが莉菜被告が昨年3月に中央区に転居した際には、頼んでも合鍵を渡してくれなかった。

 中央区への転居後に莉菜被告と詩梨ちゃんに会えたのは1度だけ。3月上旬、保育施設から「莉菜さんと連絡が取れないので迎えに来てほしい」と頼まれ、詩梨ちゃんを自宅に連れ帰った。詩梨ちゃんの様子について「少し体調が悪そうでしたが、徐々に元気になりテレビを見て踊ったりしていた」と話した。

 5月には警察から「詩梨ちゃんの安否を確認したいが(莉菜被告と)連絡が取れない」伝えられ、莉菜被告に告げると「今日は出かけているから別の日に行く」と返事があった。後日、警察官と会ったのか尋ねると、莉菜被告は会ったと答えたという。

 詩梨ちゃんが亡くなる直前の5月末、莉菜被告のインスタグラムを見て、莉菜被告の足にタトゥーがあるのに気づいて驚いた。心配になりLINEを送ると「インスタ見ないでよ」と返事がきた。母親は、莉菜被告が藤原被告と交際していることを知らなかったという。

 報道で交際相手が子どもに暴力をふるう事件を見聞きして心配になり、「詩梨をたたいたりしたらだめだよ」と連絡したこともあったという。

 母親は詩梨ちゃんの身体にけがを見つけたことはなく、莉菜被告が詩梨ちゃんに手を上げるのを見たことはないと証言。裁判官から「莉菜被告に育児ストレスを抱えている様子はあったか」と尋ねられると、「私はそうは思わなかった。何か困ったら連絡してくるので、深く悩んでいるとは思わなかった」と答えた。

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 検察側は詩梨ちゃんに暴行を加えたのが藤原被告だとする根拠の一つとして、詩梨ちゃんの殴られた痕と藤原被告の拳の大きさが整合することを初公判で指摘していた。

 証人として出廷した札幌南署の男性警察官は、石膏(せっこう)で藤原被告の拳の型を取り、指の付け根にある関節の幅などを計測したことを明らかにした。詩梨ちゃんの遺体の額にあった皮下出血の痕と比較したという。

 弁護側と裁判官からは計測方法や誤差に関する質問が相次いだ。警察官は「2~3ミリの誤差がある」と説明。裁判員から「この捜査手法は一般的ですか」と問われ、「私の経験では今回が初めて」と証言した。

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