炭鉱電車、ネットで走り続ける 大牟田で映像お披露目

森川愛彦
[PR]

 福岡県大牟田市を中心に三井三池炭鉱の石炭運搬に活躍し、今年5月に廃止された「炭鉱電車」のメモリアル映像が完成し、28日、ネット公開が始まった。27日には三池炭鉱閉山後に一部路線を引き継いでいた三井化学大牟田工場で完成披露会が開かれ、出席者は100年超の歴史を誇る電気機関車の引退を惜しんだ。

 映像は2部構成で、共に演出は映画監督の瀬木直貴さんが担当した。第1部の「紅(あか)い恋人」では、元運転士やファンらが思い出を語る中で、春の大牟田を走る「炭鉱電車」の姿をとらえている。線路上にカメラを据えたり、ドローンを駆使したりと、凝った映像が特徴だ。鉄道ファンらから提供された約40年前の走行シーンも盛り込んでいる。

 第2部の「炭鉱電車の一日」では、出発準備、走行、点検・整備の様子がドキュメンタリータッチで描かれている。走行中の運転席の様子や手動のポイント切り替えなど、鉄道ファンでもなかなか見ることができない場面がふんだんに盛り込まれている。

 瀬木さんによると、制作期間は3月から8月までの半年間で、撮影した映像は約18時間分に及ぶという。瀬木さんは「膨大な映像を切り刻むのは本当に大変でした。大牟田の風景に溶け込んだ炭鉱電車の姿を見てほしいという思いで編集しました」と話している。

 披露会には関好孝市長ら市や経済界から約50人が出席。廃止決定時に同社大牟田工場長だった裾分啓士・常務執行役員が「最初は現場へ影響が出ないよう、ひっそり廃止したいと思った。でもそれは独りよがりの考えだった。炭鉱電車は市民の生活の一部であり、かけがえのない思い出だ」と、メモリアル映像を制作した理由を語った。映像は「三井化学YouTubeチャンネル」で見られる。

 「炭鉱電車」は1891(明治24)年開業の蒸気機関車による旧三池炭鉱専用鉄道をルーツとし、1909年に運行が始まった。炭鉱全盛期の60年代には4路線計18・6キロ区間に及び、鉱山従業員の通勤にも利用された。97年の炭鉱閉山後は「三井化学専用線」として一部の運行が継続。5月に同社の船とトラックへの輸送切り替えに伴い、廃止された。

 現役最古だった1915年製など5両は同社に保管されているが、7月豪雨による浸水で運行不能になり、1両のみ9月中旬に修理を終えている。今後の保存については、市民や鉄道ファンの「動く形で」と望む声も強いが、多額の費用がかかることから、同社は「未定」としている。(森川愛彦)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら