「自動車の音」の調律師 ブランドまで表現する奏で方
稲垣千駿
凄腕しごとにん
日産自動車 先行車両性能開発部総括グループ 主管 桑田敏久さん(57)
自動車に騒音はつきものだ。エンジンがうなり、速度を出せばタイヤが転がり、車体が風を切る音も大きくなる。その音をいかに抑えるか。約3万点の部品が関わる音の原因を考え、設計変更につなげてきた。
マフラー(消音器)の構造を変えて音の大きさを調整したり、ゴムシートを使って音が伝わりにくくしたり。性能を保ちつつ、あの手この手で心地よい音を探る仕事は楽器の調律師に似ているという。最近は、静かな電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)向けに音の発生装置も開発。関わった車のモデル数は約75に上る。
エンジン音が「洗練されていない」
家から自転車を約30分こぎ、毎週のように高速道路の近くまでスーパーカーを見に行く小学生だった。高校時代に自動車会社を志し、入社後は車の操縦安定性に関わりたかったが、配属先は騒音や振動を扱う「音振(おとしん)開発」。「それ何ですか?」というぐらい知識がなかった。
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当初は異音の原因がすぐ分か…
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