ICチップで行動追跡・ホテルに缶詰…スポーツ界の模索

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遠田寛生 稲垣康介 松本龍三郎 斉藤佑介
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 新型コロナウイルスの感染を防ぎながら、選手や観客が集まるスポーツイベントをどう開催するか。国内外で模索が続いている。来夏の開催をめざす東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの大会組織委員会も対策の参考にしようと、現地を視察するなどして情報を集めている。

 米ニューヨークで開かれ、13日に閉幕したテニスの全米オープンは史上初の無観客開催だった。

 選手を含めた大会関係者は外部との接触を制限され、「バブル」と呼ばれる隔離された空間で過ごした。関係者は行動追跡ができるようにICチップ(RFID)が埋め込まれたタグ付きの「身分証」を持たされ、利用するホテル内でも認められた区画内でしか行動できず、自由な外出を禁じられた。

 バブル内の制限は3段階あり、一番厳しいレベル1は選手やコーチ、審判らが対象で、レベル3の駐車場スタッフや配達業者との交流は避ける配慮がなされた。選手らは現地到着後すぐにPCR検査を受け、結果判明まで約24時間は部屋に缶詰め。48時間後の再検査と4日に1度の検査を義務づけられた。ただし、抗体検査で「陽性」だった人は7日に1度の頻度に緩められた。

 今大会について、今年の全豪オープン女王、ソフィア・ケニン選手(米)は「まずはファンがいない」と嘆いた。これまでは部屋からセントラルパークが望めるホテルに泊まれたが、宿泊の自由がないことも残念がった。「5番街を歩いたり、ティファニーやカルティエを買えないのが残念。私はこの街が好きだから」

 優勝した車いす男子の世界ランキング1位、国枝慎吾選手(ユニクロ)は1回戦までにPCR検査を3度受けた。「隔離されていたので、日本にいるときより感染防止を気にしなくてよかった。バブルのストレスはない」と話しつつ、「1カ月ここにいろと言われたら、さすがに閉塞感があるかも」。会場ではマスク装着が義務づけられていた。外国人はマスクが苦手だと思っていたが、ほとんどの人が着用しており、鼻を覆っていない人は係員に注意されたという。

 大会主催者によると、レベル1では6500件以上のPCR検査を実施し、陰性率は99・97%だった。

 五輪の花形競技、陸上のトップ選手が参加する「ダイヤモンドリーグ」の開幕戦は8月にモナコで開かれ、5大陸37カ国から約120選手が参加した。観客は1列おきに座り、上限を5千人に。選手には72時間前の検査での陰性確認を出場条件とし、外部との交流を避けるため宿泊先は競技場隣のホテルに限定した。競技中を除きマスク着用を義務づけ、出番を待つ間もフィールド上に等間隔で置かれた椅子に座った。

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 渡航制限があった米国勢には出発前の検査での陰性証明などの提出を義務づけ、選手が現地に入ってから感染者は出なかった。大会責任者は「安全重視で対策したことで開催できた。次につながる」と話した。

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 競技場外に出るため、対策が…

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