光免疫療法の新薬の製造販売を承認へ 厚労省、世界初

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松浦祐子
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 厚生労働省の部会は4日、従来の治療が効かなくなった頭頸部(けいぶ)がん患者の新たな治療法となる「光免疫療法」で使う新薬「アキャルックス点滴静注」の製造販売の承認を了承した。最終段階の臨床試験(治験)の結果を待たずに承認する特例制度を適用した。光免疫療法で使う製品が承認されるのは世界で初めて。近く正式に承認され、今秋中にも公的医療保険が適用される見通しだ。

 楽天メディカルジャパンが今年3月に厚労省に承認申請した。頭頸部に発生した扁平(へんぺい)上皮がんが再発するなどし、手術や放射線治療などの従来の治療が効かなくなった患者が対象だ。扁平上皮がんは、体を構成する組織のうち臓器の内側の粘膜組織から発生するがん。口の中、舌、のどなどに発生する。頭頸部がん患者(年約2万8千人)の約9割を占めるとされる。

 新薬は、近赤外光をあてると反応する化学物質を、がん細胞の表面にある特定の分子「EGFR(上皮成長因子受容体)」に結びつく性質があるたんぱく質(抗体)に結合させたもの。点滴で投与し、約24時間後に患部に近赤外光をあてると、がん細胞に結合した薬と光が反応し、がん細胞が破壊される。黒く壊死(えし)し、その後、はがれるように脱落する。将来的には、EGFRが関わる食道がん大腸がんへの応用も期待できるという。

 開発したのは、米国立保健研究所(NIH)の主任研究員の小林久隆さん。オバマ前大統領が2012年に一般教書演説でこの療法を紹介し、注目された。15年から米国で治験が開始され、30人を対象にした第2相の治験では、4人でがんが消失し、9人はがんが縮小した。

 現在は、日本を含む各国で最終段階の第3相の治験が進行中だ。日本での治験に関わる国立がん研究センター東病院の田原信・頭頸部内科長は「再発して既存の治療が効かなくなった患者にとって有望な新しい治療の選択肢になる」と話す。むくみや痛みといった副作用はあるものの、従来の薬物治療で起こり得る全身的な副作用はないという。全身麻酔をした上で近赤外光をあてることが多く、入院治療が必要だ。1度で腫瘍(しゅよう)が消失しない場合は、約1カ月ごとに再度実施が可能で、回数は患者によって異なる。

 厚労省は、同療法を世界に先…

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