「死ぬと思った」 最上川氾濫、知られざる支流での被害

有料記事

上月英興 三宅範和
[PR]

 山形県内で最上川などがあふれた7月末の豪雨から1カ月となった。最上川だけでなく50本以上の河川があふれ、住宅被害だけで26市町村計700棟余りに上った。支流のそばの住民からは「全然ニュースになっていませんが、この近所も大きな被害があったんです」という声も聞いた。そのとき、何が起きていたのか。現場を訪ねた。

 住宅の浸水被害が県内最多だった河北町。谷地橋下流にある谷地地区の下野(したの)水位観測所では7月28日午後6時10分ごろ、最上川が氾濫(はんらん)危険水位(16・70メートル)に達した。午後7時までに、堤防が危険な状態になる計画高水位(16・99メートル)も超え、午後9時10分には17・55メートルに。1967(昭和42)年の羽越水害時の15・94メートルを大きく超え、過去最高水位を更新した。

 「濁流がおなかにばんばんぶつかって。死ぬと思った」。最上川左岸の支流、古佐川が通る谷地地区押切の農業太田勝志区長(67)は振り返る。住民がほぼ避難し終えた午後6時半ごろ、低地にある下釜(したがま)排水機場から戻る際、濁流で前に進めなくなった。消防団員に手を引っ張ってもらって回り道したという。

 最上川左岸は古佐川の合流地点から下流側513メートルが、堤防の整備されていない無堤区間。古佐川に水門もない。最上川の水は午後5時半ごろに集落北部の水田へあふれ出し、古佐川も含めた湖のようになって集落に流れ込んだという。

 田の冠水対策が目的の下釜排水機場のほか、建設業者や消防団のポンプ計5台で排水にあたったが、水かさは減らず、午後7時ごろには避難した。太田さんは「人の命が無事だった。それだけが救いだ」と話す。

 古佐川沿いでは羽越水害後、道路ごとかさ上げした集落もあったが、今回は押切や吉田地区改目などで住宅約60棟が浸水。押切の2棟は大規模半壊と認定された。

 修繕工事だけでなく、乾燥作…

この記事は有料記事です。残り1724文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら