終戦、冷戦、変わる世界 一筋縄ではない日米安保の今後
日米同盟の基礎をなす日米安全保障条約改定から60年を迎えた今年、「日米安保の現在地」を連載で特集してきた。冷戦期から変わらぬ基地負担や地位協定の現実と、中国の台頭を背景に変容を遂げ、なお拡大する日米安保協力の姿と課題――。特集を通じ、見えてきたものはなにか。
大きく変わりゆく、日米安保の構図
米国が日米協力の「青写真」を描き、日本がその「宿題」をこなしていく――。あえて誇張すれば、戦後の日米安保は、そんな構図で進んできた。
例えば、2006年に発表された、小泉・ブッシュの日米両首脳による共同文書では「世界のなかの日米同盟」の成果を強調。その目標を設定したのが、米国超党派の外交・安全保障専門家による対日政策文書「アーミテージ・ナイ・リポート」だ。
00年の文書は「国際的リーダーシップをとるなら、リスクを負う必要がある」と促し、後に日本はインド洋やイラクに自衛隊を派遣。求められた有事法制整備は小泉政権が03年に実現させた。「機密保持の新たな法律」を日本の指導者の課題とし、「同盟の制約」に集団的自衛権の行使禁止を挙げ、これらは後の安倍政権が結実させた。
日本の政治家は、時に平和憲法を盾に米国の要求を拒みながら、一方で国民世論の逆風の時には「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」など、米政府高官に発言を促して「ガイアツ」として利用することもあった。
自衛隊の任務や役割が拡大する一方で、日米地位協定改定や基地負担の大幅削減の足どりがあまりに鈍いのも、こうした構図と無関係ではないだろう。
だが、従来の構図は、大きく変わりつつある。一つは中国の台頭だ。軍事力を増強し、尖閣諸島周辺での威嚇に加え、高性能ミサイルの開発・配備を加速。日本を射程に収めるミサイルを2千発超保有し、特集で取り上げたように、在日米軍基地をターゲットに見立てた攻撃実験も行うなど、日本にとって、明らかに潜在的脅威になりつつある。
もう一つは米国の影響力の衰…
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