子どもたちの心身とその後の人生を脅かす性暴力について考える企画「子どもへの性暴力」の第2部は、家庭内での性暴力について取り上げます。全8回です。6回目は、圧倒的な暴力と支配の中で起きる性暴力の実態をお伝えします。
秋になると、北海道に住む女性(44)は呼吸が浅くなり、動悸(どうき)が激しくなる。秋の気配が、中学2年のときに起きたことを思い出させるからだ。
「下りてこい」
午後11時ごろ、1階から義父の声がした。ラブホテルの清掃の仕事をしている母は不在だった。
2階の部屋からズボンで下りていった。
「スカートをはいてこい!」
《逆らえばまた殴られる》。それまで、ジュースやお菓子を禁止されたり、言うことを聞かなければ木刀で殴られたりしていた。怖かった。戸惑いながら、制服のスカートをはいた。
「それじゃない!」
仕方なく、いつも家で着ていたスカートをはいて下りていくと、全裸の義父が木刀を手に立っていた。
「下着を脱げ!」
土下座をして「許してください」と懇願したが、木刀でたたかれた。「壁を向け。手を付け!」。後ろから体を触られ、義父は体を押しつけてきた。
子どものころに家庭内で受けた性暴力は、信頼する身近な人からの被害だけに特に心身に深い傷を刻み込むと言われています。この連載では、その実情とともに、予防や対策には何が必要なのかを考えます。もし性被害にあったらだれかに話して、助けを求めることも大切です。
声を上げて泣いていると、2…