氾濫まで53cmだった荒川 流域の下町、対策に温度差

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抜井規泰
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 東京を貫く巨大河川・荒川の治水は、江戸時代から幕府や政府の重要課題だ。

 記憶に新しい昨秋の台風19号多摩川が氾濫(はんらん)し、タワーマンションのエレベーターが止まるなどした。

 一方、氾濫すれば、地下鉄網を通って大手町や銀座の水没まで懸念される荒川の本流は、堤防の外に1滴の水も漏らさなかった。

 だが、あの日、荒川が未曽有の危機にさらされていたことは知られていない。

 埼玉県の秩父山中を源流に、東京の下町を流れ下る荒川は、北区にある岩淵水門を分離点に、荒川と隅田川にわかれる。一定水位を超えたら水門を閉め、隅田川下流域を守る仕組みだ。

 台風19号では12年ぶりに水門が閉鎖された。隅田川に流れるはずだった大量の水が、一気に荒川へ。どこで氾濫してもおかしくないとされる「氾濫危険水位」まであと53センチに迫った。

 荒川流域には、大部分の土地が海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」が広がる。流域にある足立、江戸川、葛飾、江東、墨田の「江東5区」は2018年、共同でハザードマップを作成した。危険区域を赤く示した地図は、下町一帯が真っ赤に染まる。マップの作成は、水害への警戒感を共有しようという姿勢の表れと受け取られた。

 だが、江戸川区のある職員は「5区の足並みはバラバラ」と明かす。

 台風19号で、5区は、都の西部や他県に一斉に避難する「広域避難勧告」の発令を検討していたことが、のちに判明した。だが、実際に勧告したのは江戸川区だけだった。

 なぜなのか。

 想定より早く電車の計画運休…

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