第3回「会いたい」提案は反対された 滋さんが抱く孫への思い

有料記事横田滋さんの43年

編集委員・北野隆一
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 拉致被害者横田めぐみさんの父滋さんの半生を取材メモでたどる連載の3回目。孫のキム・ウンギョン(ヘギョン)さんと会うまでの年月をたどります。

「お母さんが好きだった曲を聴かせたい」

 2002年9月17日、北朝鮮から伝達された内容として、めぐみさんに娘がいることを聞かされた滋さんは、翌18日の記者会見でこう語った。「ひと月前まで『拉致などない』と言っていた北朝鮮。機会があったら現地に行って確かめたい。めぐみの娘は15歳だということです。その娘が5、6歳の時に(めぐみが)亡くなったといいます。私にとっては孫ですか、そういう人からも話を聞ければと思います」

 北朝鮮からは、めぐみさんや娘の情報が次々にもたらされた。17日に訪朝した外務省公使からは翌18日、名前が「キム・ヘギョン」と伝えられた。本人もしばらくは、そう名乗っていたが、2006年6月にめぐみさんの夫だったとされる金英男(キム・ヨンナム)氏が韓国の家族と北朝鮮で再会した際に「本名はウンギョンで、ヘギョンは幼名だ」と説明した。横田さん夫妻も「ウンギョンちゃん」と呼び方を変えた。

 2002年9月末から訪朝した日本政府の調査団は、蓮池薫さんら拉致被害者やウンギョンさんを撮影。ビデオが10月3日に家族らに示された。

 蓮池さんら被害者5人が10月15日、拉致から24年ぶりに帰国。5人は滋さんと早紀江さんに対し、北朝鮮で一時期、めぐみさんと同居していたり、近所に住んでいたりしたと明かした。しかしめぐみさんのその後については「入院して死亡したといううわさを聞いた」などと言うだけで、はっきりした証言はなかったという。滋さんは「孫は元気で、めぐみは亡くなったということを納得させようとしているように思える」ともらしている。

 10月24日には、血液やへその緒から、ウンギョンさんとめぐみさんの親子関係が確定したとの鑑定結果が政府から伝えられた。滋さんは記者会見し「99.999%、親子関係が存在するという鑑定結果が出た。これからは、めぐみの娘と呼ばせていただきます」と述べ、「ディズニーランドや京都、めぐみが小さいころに住んでいた品川や広島にも連れて行ってあげたい」と期待を膨らませた。

 早紀江さんも「めぐみを捜して25年、いまだ姿は見えないが、同じ年代の元気そうな女の子がすくすく育っているということに、何ともいえない感動を覚えています」と述べ、「音楽が好きだと聞いているので、お母さんが好きだった曲を聞かせてあげたい」と話した。

訪朝したい気持ちはあっても…

 滋さんは孫に会うため訪朝したいとの気持ちが高じ、2003年1月26日の拉致被害者家族会でこう提案した。「めぐみの消息を探るために訪朝したい。しかし家族会の反対を押し切ってまで行くつもりはない。プラスの成果もあるかもしれない」

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 しかし早紀江さんや拓也さん…

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