ジョンソン首相は「はったり屋」元高官が感染対策を酷評
英国で新型コロナウイルスの感染による死者が欧州で最も多くなるなか、英ブレア政権で報道・戦略局長を務めたアラスター・キャンベル氏が朝日新聞に寄稿し、現政権の対応を痛烈に批判した。ジャーナリストだったジョンソン首相とは長年の知己の間柄。キャンベル氏はジョンソン氏を「はったり屋」と断じ、「危機を真剣に捉えることを拒否した」などと述べた。
アラスター・キャンベルさん
1994~2003年まで、英ブレア政権の報道・戦略局長を務めた
新型コロナウイルスが中国から始まり、またたたく間に世界を席巻しました。西洋にいる私たちはアジアが最も大きな打撃を受けると予想していました。一つには、私たちは過去にこのようなパンデミック(世界的大流行)の最悪の事態から逃れてきたからです。イギリス人がアジアの国々を訪れ、多くの人々がマスクを着用しているのを見て驚くのはこのためです。私たちは慣れていないのです。
もう一つの理由は、自分たちが優れていると考え、問題は他者のものであると考えることにあります。国家や人々が陥る独善です。
多くのイギリス人にとって、日本は大きな打撃を受けるだろうと予想した国の一つでした。そして数カ月後の今、日本の死者数はまだ1千人に到達していません。イギリスでは、公式発表の死者数はすでに4万人を超えています。しかも、この死者数は新型コロナウイルスが死因として死亡診断書に明記されているケースのみです。この時期の通常の死者数から分析された実際の数値は、6万を超えています。
多くの日本人は(プロサッカー・プレミアリーグの)マンチェスター・ユナイテッドを知っているでしょう。彼らのホームスタジアムの収容規模は、パンデミック以降のイギリスの多すぎる死者数を収容できるプレミアリーグ唯一のスタジアムです。(プレミア・リーグの別チーム、トットナム・ホット)スパーの6万2千人を収容する新しいスタジアムでさえも、大きさは十分ではありません。非難の多くはボリス・ジョンソン首相に向けられています。
記者会見で「物語」でっち上げ
互いにジャーナリストだったので、私は長い間、ジョンソン氏を知っています。彼は右派のデイリー・テレグラフ紙とスペクテイター誌で、私は左派のデイリー・ミラー紙のジャーナリストでした。その後、私はトニー・ブレア(元首相)の報道官となりました。ジョンソン氏は私の記者会見に出席し、鼻を鳴らしたり、冗談を言ったり、自分がでっち上げた物語の正しさを主張したりしました。物語は、欧州連合(EU)がコンドームのサイズ規制を計画しているとか、味の付いたポテトチップスや曲がったバナナを禁止する、といったたぐいのものです。彼は愉快な人物であることで有名になり、その特技でトップへと登り詰めたのです。「ジョーク」が国家のリーダーとなり、私たちの国は世界のもの笑いの種となっています。
新型コロナは、彼がいかに重大な立場に適していないかということを明らかにしました。危機を真剣に捉えることを拒否し、専門家を無視しました。近隣の国々がロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったにもかかわらず、主要なスポーツイベントを継続するよう求めました。最前線に防護装備を提供しなかったほか、必要とする全ての人が検査を受けられるという約束に次ぐ約束を守れませんでした。ブレグジット(英国のEU離脱)と同様に、彼は「必要なのはスローガンだけだ」と考えているようです。
側近を守り、国民は侮辱
彼が行った偽物のチャーチル(元首相)のような演説は、混乱を終わらせることを意図しましたが、逆に混乱を引き起こしました。彼は感染して病気になる前も姿を見せることはほぼありませんでしたが、ロックダウンのルールを破ったドミニク・カミングズ(首席特別顧問)を守るためには姿を現しました。カミングズ氏は処分を受けることはありませんでしたが、指示に従って2カ月間家にこもっていた何百万という人を侮辱しました。
私たちは長い間、ジョンソン…