55億円だまし取られた積水ハウス 新旧会長対立の結末

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松田史朗 生田大介
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経済インサイド

 積水ハウスが4月に開いた株主総会で、前会長の和田勇氏ら株主による取締役11人の選任案が否決された。和田氏らは東京の土地取引に関して同社が約55億円をだまし取られた事件を巡り、ガバナンス(企業統治)の改善や経営刷新を求めたが完敗した。事件の真相はいまだ謎に包まれたまま。和田氏らはなぜ株主提案へと突き進んだのか、その背景は――。=敬称略

 大阪市内を眼下に一望できる高層ビル35階の一室。4月23日午前、積水ハウスの株主総会が始まった。

 「議長不信任の動議を出します」

 開始40分後、最前列に座る株主の一人が手を挙げて動議を唱えた。一部の株主は議長で会長の阿部俊則が新型コロナウイルス対策を掲げ、質問数や時間を制限するかのような態度を示すことに不信を募らせていた。

 この総会が注目されたのは2017年、同社が東京都品川区の土地を巡り、地面師詐欺グループに55億円をだまし取られた事件がきっかけ。検証した社内調査報告書は土地の売買契約前、複数のリスク情報が法務部に寄せられていたとし、阿部に「(業務上の)重い責任がある」と指摘した。

 だが、真相解明は進まなかった。18年1月当時、会長の和田勇は社長の阿部の経営責任を問い、解任を図ったが逆に返り討ちに遭って、同2月に事実上解任された。

総会での対決の結果は

 その後、阿部ら役員に対する複数の株主代表訴訟が起こされたが、それでも闇のままだった。今年2月、和田や同調する専務の勝呂(すぐろ)文康は、事情をはっきりさせない経営陣11人の入れ替えを求める株主提案を出した。和田はコーポレート・ガバナンス(企業統治)の専門家らを取締役候補にそろえ、4月の株主総会で経営陣と全面対決する姿勢をあらわにした。

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 そして迎えた総会。「議長不…

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