学校再開しても…しんどい子の負担感「目配りして」

山本奈朱香 宮坂麻子 渡辺純子
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 新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言が全国で解除され、学校が再開され始めた。夏休みより長い休みだった地域もあり、不登校や「学校がしんどい」と感じる子どもたちの精神的な負担が増すことを心配する声がある。いつも以上に目配りしてほしい、と支援者らは呼びかけている。

 「学校行きたくない行きたくない」「学校始まったらって考えるだけでも恐怖…」。ツイッター上にはこんな声があふれ、いじめられていることを示唆するものも。行きたくない、の後に「しにたい」とつぶやく人もいる。

 国の自殺対策白書によると、18歳以下の自殺者数を分析した結果、夏休みなど長期休暇明けに多くなる傾向がある。

 「今回は夏休み明け以上の危機となり得るのでは」と、九州産業大の窪田由紀教授(臨床心理学)は心配する。学習についていけないといった不安や、いじめの標的になるのではという恐れを抱いてしまう子どもたちが「やっていけそうにない」と絶望してしまわないか、と感じている。

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休校中とのギャップ大きく

 不登校に詳しい首都圏の公立小学校の養護教諭も「学校に来られない子、来ても適応できず体調を崩す子は確実に増えるでしょう」と懸念する。

 休校中、親と密接に過ごした小学1年生や、生活リズムが崩れた子、一人で部屋にこもっていた子などは、特に登校しづらくなるとみる。一方で教師は授業の進度や衛生面の管理に追われる。「学校にゆったりした空気がなく、休校中とのギャップが大きい。学校ではいつも以上に子どもの様子に目配りしてほしい」と求める。

 18日に分散登校が始まった福岡県。これまで学校を休まなかった子が来なくなったという話もあるが、逆に不登校だった子が学校に来るようになったという小学校もある。「休みが長かった分、対人関係などいろんなことがリセットされたのかも。授業はまだ午前だけで、ハードルも低いのでは」と校長はみる。

 福岡市教育委員会とNPO団体の共同事業「不登校よりそいネット」によると、不登校に関する相談は休校後減ったままで、分散登校が始まっても今のところ増える気配はないという。「分散登校のうちは登校プレッシャーがゆるく、以前ほどの同調圧力を感じなくて済む。狭い空間にたくさんの子どもがいることがストレスだった子も、行きやすくなっている」と長阿彌(ちょうあみ)幹生実行委員長は話す。

 ただ「元通りの登校に戻れば登校プレッシャーが増す。遅れを取り戻そうと授業の密度が濃くなると、耐えられない子がこれまで以上に出てくる」と指摘。構築しつつあるオンライン授業の仕組みを生かし、「登校しにくい日はオンライン」という選択肢を残すことを提案している。

「オンライン出席」も選択肢に

 動き出した自治体もある。

 東京都新宿区は今月、様々な理由で学校で学ぶことが難しい小中学生の学習機会を保障する目的で作られたeラーニング学習支援サービス「palstep(パルステップ)」を、全小中学校に提供することを決めた。家庭でオンラインで学習した内容や進度を学校側で確認できるほか、学校が自作したプリントや問題も提示でき、連絡手段にも使える。

 文部科学省は、2018年と19年秋の通知で、長期の病欠や復学の意思がない不登校などの場合も、遠隔教育や校外の学習で「出席」扱いにできるとしている。すでに東北地方の中学などでは、このeラーニングで「出席扱い」にした例もある。

 新宿区教委の担当者は「今回はいろいろな事情で不登校が増えることが懸念される。登校したくなった時に困らず、卒業もできるように。子どもと学校をつなぐツールとしても活用したい」としている。

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《子どもや親向けの主な相談先》

●生きづらびっと

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水・土曜以外は午後5時~10時半、水曜は午前11時~午後4時半

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毎日正午~午後4時(受け付けは午後3時まで)午後5~9時(受け付けは午後8時まで)

●24時間子供SOSダイヤル

電話 0120-0-78310

●NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク

電話 03-3906-5614(6月から再開予定)

メール info@futoko-net.orgメールする

●チャイルドライン(18歳以下)

電話 0120-99-7777

(午後4~9時)

 長期休校後、各地で久しぶりに学校が再開され始めています。喜ぶ子がいる一方、不安を抱えている子もいるかもしれません。身近な疑問や困りごとを募っている「#ニュース4U」取材班にご意見をお寄せください。ツイッターでハッシュタグ「#ニュース4U」をつけて投稿してください。LINEはID「@asahi_shimbun」かQRコードで「友だち追加」をお願いします。

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この記事を書いた人
宮坂麻子
編集委員|教育・こども担当
専門・関心分野
教育・こども