新しい生活様式、ヒトとして大丈夫? 動物学者に聞いた

有料記事

聞き手=編集委員・長沢美津子
[PR]

 新型コロナウイルスの感染を防ぐため、日常の様々なふるまいが縛られる生活は、緊急事態宣言の解除後も続きそうです。政府の専門家会議はそのための「新しい生活様式」を示しました。ただ、望ましいとされる行動のあれこれは、ホモ・サピエンスという動物としての視点に立つと不自然なことが多い――。認知行動学と動物福祉の専門家で名古屋市東山動植物園の企画官・上野吉一さん(59)はそう感じています。ウイルスが変えようとしている「距離感」は、心につながっているからです。

ホモ・サピエンスはそんなに意識的に生きてない

 ――近づかない、向き合わない、話さない。これが是とされる日常とどう折り合いをつけるのか。「自分で決めたい」という声もあがっています

 具体例が必要だったのでしょうが、示された項目の細かさには、ここまで踏み込んでくるのかと驚いたし、科学・医学と経済のせめぎ合いで、主役のはずの人間一人ひとりの行動や心理という視点がないことに疑問を感じました。

 どんな動物にも個性があるので、ヒトは皆どうあるべきかという話ではなく、ヒトの性質という点から見ています。実際にオンラインが可能にしてくれたことがある。一方で、置き換えられないこともある。手と手を伸ばして、触れない距離を想像してください。初めてのデートなら、2人の関係がよそよそしいまま終わっても不思議はありません。

 誰もが感染は止めたいし、科学・医学的な判断という理屈はわかります。けれど、ホモ・サピエンスとしての私たちは、そんなには意識的に生きていません。無意識に近づきたい相手とは距離を詰め、離れたい相手は視野に入らないようにして、居心地を良くしている。リモートワークを経験し、満員の通勤電車の距離感がいかに心の負担だったか。気づいた人も多いのではないでしょうか。

 ――食事の時は横並び、おしゃべりは控えて料理に集中するとも書かれています。ラーメン店のカウンターで、ひとり味に集中するよろこびもありますが、会いたい人たちと鍋を囲むような空間が「リスク」と呼ばれるのは切ないです

ここから続き

 人間は社会的に食べています…

この記事は有料記事です。残り1857文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルス最新情報

最新ニュースや感染状況、地域別ニュース、予防方法などの生活情報はこちらから。[もっと見る]