蔓延する正義という病 真山仁さん「まるで隣組の密告」
東日本大震災後に、日本で広く蔓延(まんえん)したことがある。
「正しさ」を振りかざす人がSNSを中心に増えた。そして、日常生活でも、自分が常に「正しい」側にいたいという願望も強くなった。
最大のきっかけは、「絶対安全!」と言われていた原子力発電所の事故ではないかと私は考えている。いわゆる安全神話の崩壊で、国民の多くは、何が正しいのかが分からなくなった。
やがて、権力者が国民をだまし続けた揚げ句に、原発事故を引き起こしたという考えを持つ人が増えた。
この場合の権力者とは政治家だけではない。メディア、インテリ、官僚、大手企業の経営者らが含まれる。
自分たちは「権力者にだまされた被害者だ」という立ち位置がいつしか「我々は正しい」という自己弁護を生み、やがて「その正しさを揺るがす者は許さない」という攻撃へ向かった。
そして、ヒステリックなまでに、他者を糾弾することの根源として「正しさ」を振りかざす発言が続いた。
このムードを拡散したのが、SNSだった。中でも140字で、意見を主張するツイッターは、匿名性が高いこともあって、過激な発言も目立ち、拡散力が強かった。
「正しさ」を振りかざす傾向は、今なお、続いているが、とはいえ国民生活にダイレクトに影響を及ぼすほどでもなく、言ってみれば「居酒屋の話題」的な存在だった。
ところが、新型コロナウイルスの感染が深刻化するにつれ、再び「正しさ」の押しつけが始まった。
新型コロナウイルスによる自粛が続く中、市民同士の監視の目が厳しくなっています。後半で、真山さんがコロナ禍の「正しさ」について考えます。
フォロワー数の多い一人が「…
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