自粛、新生活様式…苦境の飲食店 もがいて見えた未来も

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栗田優美 小林未来
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 新型コロナウイルスによって苦境に立たされる飲食店。営業や外出の自粛要請が長引いているうえ、店外での食事を勧めるなど大きな影響を受けそうな「新しい生活様式」も公表された。事態の改善は見通せないが、店主たちは生き残りをかけて、それぞれの「新しいスタイル」を模索している。

「都内の半数の店がつぶれる」試算も

 「レストラン、居酒屋、バーなどが続々と廃業に追い込まれている。このままでは、街から飲食の灯が消えてしまう」

 東京や大阪でレストランを展開する山下春幸さん(50)は1日、料理人仲間らに呼びかけて「飲食未来の会」を立ち上げ、家賃補償などを求める署名活動を始めた。緊急事態宣言延長の見通しが伝えられる中、自分たちの声が政治に届いていないことに危機感を持ったからだ。

 飲食店の苦境は昨秋から始まっていた。店内で食事をする時の消費税が10%になり「年末の宴会需要が2割ほど減った」(山下さん)。春の歓送迎会、お花見、大型連休で盛り返しをと期待をかけていたところに、コロナ禍が襲った。「飲食店の資金のストックは、よくて2カ月分。ここまで長引いてくると、持ちこたえられない」

 飲食店の予約・顧客管理システムを提供しているテーブルチェック(東京都中央区)の調査では、今年の大型連休中の1店舗あたりの平均来店件数は、昨年と比べて90.5%減った。4月の1カ月間の平均予約件数も、昨年と比べて東京、京都、神奈川などで軒並み9割近く減った。

 山下さんの店では3月上旬からテイクアウトを、4月に緊急事態宣言が出されてからは配達や通販も始めた。しかし、同業の小さな店の中には、IT化できておらず、容器の調達すらままならないところもある。

 山下さんによると、米国では、ロックダウンを数カ月続けた場合、24.5兆円の市場が失われ、個人経営の飲食店の75%がつぶれる、という試算があるという。これを参考に試算したところ、都内に7万5千軒あるといわれる飲食店のほぼ半数がつぶれ、失業者数は40万人に上るという結果になった。「決して実感ともかけ離れておらず、むしろもっと悪い結果もありうる。今『しばらく休業します』と貼り紙をしている店のうち、どれほどが再開できるか……」と山下さんは唇をかむ。

 今月始めた署名活動では、適切な補償のない自粛には限界があることを訴え、まずは東京都に「家賃補償に特化した80%以上の補助」「通常の給与に準じた85%以上の補償と手続きの簡素化」を求める。都は営業自粛に協力した店舗に50万円、複数店舗を運営している場合は100万円の休業協力金を打ち出しているが、都心ではテナント料だけで1カ月200万円前後という店も少なくない。与党が政府に提言した家賃補助も「家賃の3分の2、上限は中小企業で月50万円、個人事業主で月25万円」というものだ。

 署名を集める嘆願書ではほかにも、来年の東京五輪パラリンピックまでに多くの店が消え都市の魅力が損なわれかねないこと、農業や水産、流通などの各産業への影響などもつづり「おいしい食事と楽しい空間で、人々の笑顔と活気が一日も早く戻るように」と支援を訴える。ミシュランの星付きの店から個人経営の店主、バーテンダーまで、広い分野の人が飲食未来の会に加わった。

 署名は特設サイト(https://in-mirainokai.org/別ウインドウで開きます)から。ある程度まとまったら、小池百合子都知事に提出するという。

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■飲食が軽んじられていないか…

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