「北の国から」地元の高校生演劇集団、全国の舞台へ

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井上潜
【動画】活動費も部室もない富良野高校演劇同好会が結成2年目で全国の舞台へ=井上潜撮影
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 「金がなければ知恵を出せ。知恵もなければ元気くらい出せ」。そんな合言葉の高校生演劇集団がある。北海道富良野高校(富良野市)の演劇同好会だ。正式な部活ではなく、活動費もままならない同好会が、結成2年で全道高等学校演劇発表大会で最優秀賞に輝き、夏の第44回全国高校総合文化祭(2020こうち総文)への出場を決めた。そんなミラクルを支えたのは、倉本聰さん脚本のテレビドラマ「北の国から」をきっかけに始まった地域の取り組みだった。

わずか2年前に発足

 演劇同好会は2018年4月にできた。今のメンバーは、3年生2人、2年生10人。みな全道大会はもちろん、地元の予選にあたる上川支部の大会に出るのも初めてだった。

 演劇同好会が演じた作品の名前は「へその町から」。顧問の清野俊也教諭(49)と生徒が一緒に脚本を練り上げた作品で、男子部員の獲得に奔走するある高校の演劇同好会を舞台に、同好会ゆえの苦労に直面する生徒たちが「自分にとって演劇とは何か」を再確認していく。部長の太田有香さん(3年)は「自分たちの体験や思いを出し合った」と言う。

 ミラクルの始まりは、19年10月3日に始まった上川支部大会。部活ではないため活動費が出ない演劇同好会は、ホテルに泊まれず、みんなで公民館に寝袋を持ち込み3泊した。食事は栄養士の資格を持つ吉村望さん(2年)の母親が駆けつけ、公民館の調理場で炊き出しを作ってくれた。お風呂はみんなで近くの公衆浴場へ通った。

 「床が硬くて寝ていると痛かったけど、途中から楽しくなった」と和田彩花さん(同)。そんな環境で過ごした支部大会だったが、参加12校のなかで、最優秀賞に選ばれた。

 そして迎えた全道高等学校演劇発表大会。北海道の10支部を勝ち抜いた強豪17校が競う大舞台は、同好会のメンバーたちにとって、「ほかの学校の演技を見て勉強する場所」(吉村さん)のはずだった。

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 同好会の出番は、3日間に及…

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