「絶対潰す」に震える局長 録音示す日本郵便の「風土」

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藤田知也
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 仲間を売ることは許せん。(通報者に)局長がいたら絶対に潰す――。

 日本郵便の有力郵便局長が配下の郵便局長にそう迫り、内部通報した人物を特定しようとしていた問題で、そのときのやりとりを記録したとされる音声データを朝日新聞は入手した。一連の発言について通報者捜しをした局長は「指導のつもりだった」などと主張しているが、音声では「独特の組織風土」を示すような発言が次々と飛び出している。

 音声データは昨年1月24日に録音されたものだとされる。

【動画】内部通報者を探す特定郵便局長の恫喝音声データ(提供)

 「(通報者捜しが)会社はダメちゅうけど、犯人を捜す」「(通報)してないな? 約束できるな? (名前が)あったらおれんぞ」。そんな発言も生々しく残っている。場所は郵便局の応接室とみられる。

 声の主とされる郵便局長は昨年春まで、旧特定郵便局長として日本郵便九州支社でナンバー2となる副主幹統括局長だった。震えた声で返事をしているのは、同じ福岡県内の郵便局長で、どちらも全国郵便局長会のメンバーだ。

 全国郵便局長会は、全国の旧特定郵便局長ら約1万9千人でつくる任意団体で、組織内候補を国会へ送り込む自民党の有力支持団体でもある。明治初期に地方の名士らから局舎を提供してもらって始まった特定郵便局の制度は民営化で廃止されたが、その後も局長間の絆や上下関係が組織を通じて残されている。

 ことの始まりは一昨年10月、前統括局長の息子(=別の郵便局長)が内規違反の疑いで日本郵便のコンプライアンス部門の調査を受けたこと。息子は疑惑を否定し、不正とは認定されなかったが、前統括局長は調査終了後の昨年1月、通報者と疑う局長を呼び、通報行為そのものを非難。通報者が名乗り出るよう促したとされる。

内部通報制度を有効に機能させるには、通報者が特定されないように配慮し、調査をする際も内部通報がきっかけだと知られないようにする工夫が求められます。しかし今回のケースでは、日本郵便にそういった配慮が欠けていた疑いが浮上しています。「恫喝」ともとれるやりとりが起きた背景とその後を記事の後半でお伝えします。

 通報者6人を含む福岡県内の…

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この記事を書いた人
藤田知也
経済部
専門・関心分野
経済、事件、調査報道など