「当たり前」が戻る日を信じて、オンライン部活で気持ち通わす(奏でるコトバ、響くココロ)
千葉県立国府台高校
音楽は私達を繋ぐ魔法
国府台高校吹奏楽部3年の熊坂実咲は中学時代、その演奏の素晴らしさとパフォーマンスに感激し、「高校はここしかない!」と確信した。吹奏楽部員のほとんどは、受験勉強などが理由で高校2年の3月のスプリングコンサートで引退する。先輩たちのスプリングコンサートを観(み)て、今度は人生観が変わってしまうほどの感動を受けた。
「私たちもスプリングコンサートで引退するんだな……。それまで、全力で頑張っていこう!」
国府台高吹奏楽部のモットーは「魔法をかける鴻陵サウンド」。「鴻陵」は国府台地区の古い地名に由来するといい、学校の通称でもある。音楽によって観客に魔法をかけ、また、演奏する自分たちも魔法にかかったように最高の演奏を披露する。
その集大成の場がスプリングコンサートなのだ。
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国府台高吹奏楽部は、先輩が新入部員の一人ひとりにあだ名をつける。実咲は「みーちゃん」。2019年度、2年生になったみーちゃんは吹奏楽部での最後の1年を駆け抜けた。吹奏楽コンクールでは東関東大会に出場した。前年の金賞をこの年も目指したが、結果は銅賞で悔しい思いをした。だが、ポップス演奏を得意とする国府台高は全国ポピュラーステージ吹奏楽コンクールは第3位、全日本ブラスシンフォニーコンクールでは優勝することができた。
いよいよ、みーちゃんたち2年生に残されたステージは2020年3月25日のスプリングコンサートのみとなった。
目玉は《歌劇「トゥーランドット」》。ほかに国府台高の十八番である《魔法にかけられて》、2019年度の代を象徴する曲の福田洋介作曲《LOVE POP SOUL!》、ミュージカルなど。部員たちは毎日ミーティングで「Springまであと○日」と書かれた紙を掲げ、その日が来るのを楽しみにしていた。
ところが――…