「不安から逃げずに」 コロナ疲れのあなたに、言葉の薬

有料記事アピタル編集長インタビュー

聞き手・岡崎明子
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 新型コロナの感染拡大で外出自粛が求められる中、自宅で過ごす人が増えています。日常生活が突然奪われ、明日をも見通せない今、心が不安定になっていませんか。がん哲学外来を立ち上げ、多くのがん患者や家族らと対話してきた順天堂大名誉教授の樋野興夫さんは、この状況はがん患者が置かれた状況に似ていると言います。コロナ疲れしている私たちに、「言葉の処方箋(せん)」を出してもらいました。

1954年生まれ。がん哲学外来創始者、順天堂大学名誉教授、新渡戸稲造記念センター長。著書に「日めくり 人生を変える言葉の処方箋」など。

家族で過ごすのが苦痛

 ――がん哲学外来での経験が、今回のコロナ禍と重なる部分はありますか?

 「これまでに3千人ぐらいの患者さんと接してきたけど、うち、病気や治療の悩みを抱える人は3分の1。3分の1は職場の人間関係、3分の1は家族との人間関係だね。別に会話がなくてもいいけど、顔が見える距離でテレビを見たり、食事をしたりして一緒に過ごすのが苦痛になる人が増えてきた。これは、日本人特有の現象だね」

 ――どういうことでしょう。

 「健康なときはみんな、外に出て働いたり、活動したりするでしょ。だから、そんなに家族で顔を合わせなくてもすむ。でも病気になった途端に家で過ごす時間が増えると、今まで見て見ぬふりしてきた家族間の問題が表に出てきてしまう。同じ部屋で30分間、沈黙していても苦痛に感じない人間関係が築けるかどうかは、いわば『訓練』だね。習慣化すれば、ストレスもなくなるから」

 ――他人との日々の「雑談」がなくなった生活も、こんなに味気ないものだと改めて思いました。

 「一人で過ごす、ということにも慣れていない人が多いからね。がん哲学外来でも、夜の6時になると無性に寂しくなる、という人が多い。ただ、『会話』と『対話』は違う。もちろん、何げない言葉を交わす日常の会話は大事だよ、元気なときは。対話は心と心で交わす。黙っていても、困っている人と一緒に困ってあげるということ。ぼくは『犬のおまわりさん』と言っている」

コロナばかり考えると疲れる

 ――自宅に閉じこもる生活が続き、うつうつとした日が続きます。

 「不安や悩みは、『解決』することはできなくても、『解消』することはできる。悩みは決してなくなるものではない。でも、それを問わなくなるのが解消。つまり、悩み事の優先順位を下げるということだね。たとえば、新型コロナウイルスに感染したくないと一日中考えていたら疲れてしまう。そのためには、『ほかのこと』を優先順位の上にあげなくてはならない」

 ――ほかのこととは?

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 「自分の役割、使命だね。何…

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