誕生直後の宇宙を探れ 「未知の38万年」語る重力波

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伊藤隆太郎
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 私たちはなぜ存在するのか――。夜も眠れない深遠な問いに答えるには、「宇宙はどう始まったか」の解明が欠かせない。タイムマシンがあれば昔が見えるのに……。実は、人工衛星で観測する計画があります。日本も打ち上げます。

「宇宙の晴れ上がり」の壁を越える

 昔の宇宙を見るには、遠くを見ればよい。1光年離れた星の光は、1年かけて届いた1年前の光だ。遠くを見れば見るほど昔の宇宙が姿をあらわす。いまは約138億年前までさかのぼることができる。

 だが、光(電磁波)で見る方法には限界がある。生まれたての宇宙はあまりに高温なので、陽子や電子が高速で飛び交い、光も邪魔されて抜け出せなかった。宇宙が冷え、光が自由に進めるようになるのは、誕生から38万年後。「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる。その直後の姿をとらえた「宇宙マイクロ波背景放射」の画像は有名だ。

 では、誕生から38万年後よりも昔にはさかのぼれないのか。「いいえ、誕生直後の宇宙を探る方法があります」と、高エネルギー加速器研究機構茨城県つくば市)の羽澄昌史教授。目指すのは、重力波の観測だ。

 重力波とは、ブラックホールのような極めて重い物体が運動することで生じる「時空のゆがみ」が、さざ波のように伝わる現象だ。極めて微弱なので観測が難しく、米国にある装置「LIGO(ライゴ)」が初観測に成功したと発表したのは2016年。アインシュタインが一般相対性理論で存在を予言してから100年かかった。

 LIGOなどがとらえた重力波はブラックホールなどの合体で生じたものだ。宇宙が誕生した直後の重力波は、それよりもさらに観測が難しい。羽澄教授が進める「Lite(ライト)BIRD(バード)計画」では、人工衛星で観測する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が昨年、衛星打ち上げ計画を決めた。

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